スポーツの秋 (あれから1年)
院長 廣辻徳彦
暑い夏が過ぎたと思ったところへ台風が関東を直撃し、千葉県では広範囲に停電が続く事態になりました。関東地方を直撃した台風では過去最大クラスであったと聞きます。これだけ科学が発達しても、台風や地震をコントロールすることはできません。東京の隣県とはいえ、面積の広い千葉県では意外に復旧事情が悪いようです。被害を受けた皆さんの日常が1日でも早く戻ることを祈っています。
秋には「実りの秋」、「スポーツの秋」、「芸術の秋」、「読書の秋」、「食欲の秋」などいろいろな修飾語が付きます。スポーツといえば9月20日に始まったラグビーW杯、私も神戸での試合を観戦しに行きました。外国から応援にきたと思われる人たちも大勢いたのですが、イングランド対アメリカ戦ではイングランド国歌(ラグビーではアンセムと言います)の「God save the Queen」の大合唱がスタジアム中に響き渡り、日本での試合とは思えない盛り上がり様でした。試合はイングランドの大勝でしたが、最後にアメリカがワントライを報いてスタジアム中が大喝采、久々に心躍る体験をさせてもらいました。9月28日には日本代表が強豪国アイルランドに堂々の戦いを挑んで勝利し、日本中、世界中に衝撃を与えました。日本のベスト8進出も夢ではないかもしれません。10月中はますますラグビーから目が離せなくなりそうです。
さて、昨年の10月は私どものクリニックにとって、理事長であった父、廣辻逸郎が急逝するという大変なことがあった月でした。従来大変健康であった父ですが、調子が悪いと言い出してから入院して息を引き取るまで約20時間余り、その日からしばらくの間は何が何だかわからない状態で過ごしたことを覚えています。それでも時間が経過するのは自然のことで、もう1年になるのかと不思議な気もします。カメラが好きで、よくふらっと写真紀行に出かけていた父はラグビー観戦も好きでした。弟を無理やり誘っては花園まで高校ラグビーの観戦に行っていたので、もし今元気なら必ずW杯を観に行って、大きなカメラを構えてスタンドに陣取っていたことと思います。9月には宝写会という医師会の写真クラブの展示会で、父の作品を展示してくださいました(残念ながらどうしても時間が作れず私は行けずじまいでした)。これからもクリニックの待合室には父の写真を飾っています。ご覧いただければと思います。
健康とは!(お酒:アルコールの害)
ラグビーW杯の期間中は、ビールの消費量が半端な量ではないとのニュースがあります。スタジアム内だけでなく、試合の中継を見ながら楽しむスポーツバーでも、サッカーの試合に比べて数倍のビールが飲まれるということです。確かに先日の神戸のスタジアムでも、隣の外国人グループは各自ビールを4、5杯以上は注文していました(ちなみに1杯700円)。楽しみ方はとにかく、量には注意が必要です。
アルコールの健康への影響は、肝臓やすい臓だけではありません。わずかな量であれば循環器系の疾患である高血圧や心臓関連死のリスクを下げると言われていますが、あくまでわずかな量です。過量の飲酒や一気飲みは避けるようにしましょう。がんとの関連も指摘されています。特に口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸など消化器系のがんと女性の乳がんに対してはリスクが上がります。濃度の強いお酒は特に注意が必要ですし、アルコールだけでなくその代謝産物であるアセトアルデヒドにも発がん性があります。消化管に対してはがんだけではなく、食道や胃の粘膜異常や、マロリーワイス症候群(嘔吐などが原因で食道と胃の吻合部に裂傷ができる病気)、吸収障害、下痢、痔核への影響もあります。その他にも糖尿病や痛風、高脂血症などへの関わりも指摘されているところです。
もう一つ、アルコールの問題で考えなければいけないのは「依存症」です。依存症は、アルコールに対する精神的、身体的依存のために飲酒のコントロールができなくなってしまう状態です。依存症になると、飲酒の量に歯止めがかからない、普通なら飲んではいけない状況で飲んでしまう、飲酒のために虚言、暴行、暴言などの行動を起こすようになります。そのまま悪化すると、不安症状や動悸などの身体症状が現れ、手足や全身の震え、けいれん、幻覚も生じるようになります。以前はアルコール中毒とも呼ばれていましたが、アルコール依存症は脳の働きに関する病気です。このような状態になった場合は継続する断酒が必須となるのですが、病院での相談や断酒グループや周囲の支援、カウンセリングをできるだけ利用して取り組む必要があります。「お酒は楽しくほどほどに」が一番ですね。