漢字のことなど
院長 廣辻徳彦
即位の礼に伴う連休のため、当院も9連休というクリニック開設以来のお休みになりました。5月7日から診察を始めたせいか、この1ヶ月は早く過ぎていった気がします。交通渋滞予想が大きく外れたり、連休初日のディズニーランドがガラガラだったり、街もいつもの連休とは違った様子でした。すでにお仕事モードに戻ってしまっていますが、6月には祝日がないので次の連休は7月の「海の日」までお預けです。
祝日といえば、クイズ番組で「1年で最初の祝日は?」などという問題を聞かれたこともあるでしょう(答えは「元日」、「元旦」は元日の午前中のことを指すので間違いです)。最近は東京大学の学生さんに挑戦する番組があって、たまに見る機会があると常識問題から超難問までことごとく答えている東大生に感心させられます。元々優秀な頭脳を持っていて知識の幅が広く、しかもおそらく趣味の延長線でクイズを勉強している学生さんに叶わないのは当然かもしれません。あの「林先生」も出演される別の番組では、先生の専門の国語から漢字の問題が出題されます。漢字なら中学高校時代にかなり勉強したはずなのですが、最近は全てパソコン入力なので、「読む」ことはできても「書く」能力が著しく低下していることを実感します。わかっているつもりなのに書けないのは、大変悔しく感じるものです。
同じ読み方で意味の違う熟語を間違えることもあります。最近、私も所属している日本眼科医会という団体から、「都道府県間で所属が変わる際の「移動届」を、ホームページからダウンロードできるようになりました」とのアナウンスがありました。あれあれ、これは「異動届」の間違いですね。この二つの熟語は、「経理課から総務課に異動することになったので、机の中の私物も移動した」というように使い分けます。偉そうな名前の団体なのですが、指摘してもHPがまだ訂正されておらず、中学生でもわかる恥ずかしい間違いが掲示されたままの状態です。もちろん、熟語が時代とともに変化することもあります。昔は「一所懸命(武士が所領を命がけで守ること=物事に懸命に取り組むこと)」と教わったものが、今では「一生懸命」という熟語で使われています。言葉は生き物、梅雨入りする6月は家の中でパソコンやタブレットばかり見ていないで、少しは字を書いてみるのもいいかもしれません。
健康とは!(タバコの依存性)
タバコのが健康に悪いことは、過去に書いたように科学的検証で明らかになっています。がんや脳血管疾患、虚血性心疾患、呼吸器疾患など、喫煙によってその疾患に罹患するリスクが高まるということです。自分の身だけに起きることなら仕方がないと言えるかもしれませんが、受動喫煙によって家庭内で配偶者や子供にも疾患リスクが高まったり、喫煙習慣の原因になったりでは自己責任ではすみません。5月31日は「世界禁煙デー」とされていて、関連のニュースでは「世界保健機構(WHO)によれば喫煙や受動喫煙で死亡する人は年間最低800万人以上と推定されている。40%以上が肺がんなどの肺疾患で亡くなり、そのうち受動喫煙での死者が100万人、5歳未満の子供でも6万人以上が呼吸器疾患で犠牲になっている」とありました。建物内禁煙の推進が遅れている国も多いという指摘もされていました。
頭では悪いとわかっていてもタバコをなかなかやめることはできません。これは「意志が弱い」という一言で片付く問題ではなく、タバコの持つ中毒性=依存性によることが多いのです。タバコに含まれるニコチンという成分はとても吸収がよく、肺だけでなく口腔粘膜などからすぐに血中に入り脳に到達します。脳にはニコチン受容体というものがあり、これにニコチンが結合してドパミンという物質が放出されます。ドパミンは脳内報酬系という働きに関係していて、気持ち良さなどを得られるように作用するので、喫煙すると満足感が得られます。ただ、ニコチンは体内から消失するのも早いため、喫煙後しばらくすると落ち着かなくなったりイライラしたりする気持ちになり、もう一本を吸いたくなってしまうという仕組みです。もちろん初めて一本喫煙しただけでこの状態になるわけではなく、何年と続けることによって、また、仕事で成功したり落ち込んだりした後に喫煙することで落ち着いた気持ちになる(ドパミンの作用)経験を繰り返すことによって依存症になっていくのです。成人に比べて未成年ではそのスピードが速いこともわかっているので、家庭内での喫煙は慎んで欲しいものです。ニコチンの依存性はヘロインやコカインという薬物以上とも言われています。禁煙するのも難しいものなのです。