梅雨の頃
院長 廣辻徳彦
今年の近畿地方は、記録的に遅い梅雨入りとなりました。平年より19日、昨年よりも22日遅く、記録のあるなかでは最も遅い梅雨入りだそうです。もう50年も前になってしまうのですが、私が子供の頃の梅雨から夏の時期は、その当時クリニックのあった野上1丁目の山下橋付近の田んぼや山下橋から寿楽荘の坂を上る途中にあった「山下池」という名前の池で、オタマジャクシやカエル、ドジョウ、ザリガニを取っていたように思います。取った獲物は持ち帰ることも多かったので、母親にとってはとても迷惑だったことでしょう。現在の野上2丁目のクリニックに上る坂を右手に下ると農地は残っていますが、山下池も今では埋め立てられて宅地となり、逆瀬川駅周囲にもうほとんど農作地はありません。私にとっての梅雨の思い出は他愛もないことですが、現在は簡単に生き物を取りに行くことはできませんし、人様の田んぼに立ち入ること自体が許されません。虫やカエルに触れない子供が増えているのも仕方がないことかもしれません。
最近は梅雨の頃にも豪雨被害のニュースを耳にします。日本は温帯気候の国であると学校で教わったはずですが、最近では海の中にも熱帯魚が見られるようになっているらしく、亜熱帯気候に近くなっているとも聞きます。空梅雨では困りますが、できれば被害が発生せず、農業などに必要な程度の雨の恵みをもたらす梅雨であって欲しいものです。7月も半ばを過ぎ梅雨が明ければ、おそらくまた猛暑が訪れることになるのでしょう。気温が35度を超える猛暑日には、外出することが熱中症などで命に関わるので注意が必要であるとの文言がニュースで聞かれます。室内には冷房が必要ですが、室外機から出るエネルギーが気温を高めるという負のスパイラルに陥ってしまう現象も近年問題となっています。日々の生活では暑い、寒い、雨が降るなどいろいろ不満はありますが、北極や南極のように寒過ぎず、赤道直下のように暑すぎることもない日本の位置する地球上の座標は、おそらく世界の中では恵まれた環境にあるのでしょう。海に囲まれて、夏は海水浴、冬はスキーも楽しめるよいところがたくさんあります。蒸し暑い梅雨の時期、これから増える台風、熱中症に気をつけなければいけない猛暑を、冷房も上手に利用してうまく乗り切りながら、上手に過ごしていきたいものです。
健康とは!(禁煙への道)
タバコは自身のみならず、周りの、特に大事な家族の健康にも間違いなく悪い、というかはっきりとした致命的な影響を与えます。始めてしまうと強い習慣性のために簡単にやめることもできません。健康面以外でも、タバコには多額の税金が課せられていて、現在1箱440円のタバコには、32.59円の消費税、122.44円の国税と地方税がそれぞれ含まれています。合計で277.47円、率にして63.1%の税金です。この30年で紙巻きたばこの消費量は約半分になっているのに、タバコ税は約2兆円でほとんど減っていません。頭では健康的にも経済的にも悪いことだらけとわかっていても、その強い習慣性のためにやめられないタバコ、なんとか禁煙への道を考えたいものです。
もちろん自分の力だけでやめられる人もいらっしゃいますし、やめられずともかなり喫煙本数を減らされている方もいらっしゃいます。しかし、喫煙は習慣性のある「ニコチン依存症」という病気であるという認識がされている現在、保険診療で禁煙にトライするのも有効な手立てです。依存症のテストを受ける、文書で同意するなどの条件もありますが、約3ヶ月の治療期間で健康保険が3割負担であれば、診察料と薬剤料、処方料などで約2万円の費用ですみます。1日一箱のタバコを吸い続ける場合の約6割の負担で受診できるということです。処方される薬はニコチンを含まない薬やニコチンパッチというシール状の薬であり(ニコチンガムは適応外)、最終的に3ヶ月間治療を続けた中で約5割の人が禁煙を続けることができると言われています。禁煙できれば、味覚や嗅覚が鋭敏になり食べ物の味が美味しくなるそうですし、衣服や部屋のタバコ臭い匂いがなくなります。喫煙していると自分では気がつかないようですが、服からタバコの匂いがするので喫煙者だとすぐにわかるものです。禁煙できている期間が長くなるほど、心血管疾患や肺疾患、ガンの発症リスクが下がります。自分や家族が病気にかかからなければ医療費も少なくてすみますし、たばこ税も納税しなくてよくなります。公共の場での喫煙に対しての締め付けが厳しくなってきている今こそ、禁煙を目指していただきたく思います。