眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m4

投稿日 2006年6月1日

医療に対する私の基本姿勢

理事長 廣辻逸郎

連日新聞テレビに医療問題の報じられない日はありません。しかもその内容が、医療過誤や診療費の不正請求、医師不在等々医師不信につながる医師にとってはマイナス報道が殆どで悲しい限りです。
一方医学の進歩は止まることは無く、再生医療DNA遺伝子治療の世界に入っております。
しかしどんなに進歩しても私達の医療は人間を対象にしている事に変わりはありません。
医学は自然科学です。医療はその医学を基礎に人間を対象にしていることを忘れてはならないと診療時の基本姿勢にしております。
学生の時、内科の開講初頭教授が『我々の対象は温かい血の通った人間である』と墨書された記憶が生々しい。恋に心をときめかし、愛児に頬ずりする。そうかと思えば嫉妬に狂い憎さに人を殺めてしまうことすらする。
自然科学の医学でない文学的要素も医療には係わっている事を認識すべきと思います。
現代医学は分子単位で人体を解明する事は可能になりましたが、まだまだ未知な世界が多いのです。
宝塚市医師会の倫理綱領の冒頭に『医師は人間を愛し医学を愛する』と記されています。前述しましたが、医学は自然科学です。しかし医療は愛を基本にした人間学です。DNAの世界で病気を解析しても、医療に哲学・宗教・文学を無視してはならないと信じております。

健康とは! 自律神経(感情神経)について

最初に健康とはどういう事か。次に顔が違うように健康法は個人によって違う事。4月号では睡眠薬や安定剤に頼らなくて、ラジオを聞く事で休めやすよと。そして先月はストレスをプラスイメージで捉えて見てはと記しました。基本的には健康は薬やサプリメントで得られるものでなくて、本来各器官が調子よく働いてくれるのを調子よく維持するように努めることで達成されると思います。
今月はその一つ自律神経について私の考えを記します。
自律神経は全ての内臓、全身の血管・分泌腺に分布して働きをコントロールし、体内の環境をえております。交感神経と副交感神経の二つあって、一つの器官に相反する働きをします。簡単に言いますと、嬉しい時,楽しい時は交感神経が、悲しい時、怒った時は副交感神経が働くと理解してください。 楽しい食事をすると唾液や胃液の分泌も良く、胃腸の働きもスムーズで消化も促進します。逆に腹を立てながら食事しても砂を噛む思いで、胃腸の働きも硬くて駄目です。
自律神経は感情の影響も強いので、感情神経とも呼ばれています。
恋を楽しんでいる人の瞳は大きく、眼瞼もパッチリと大きくなり、涙腺も刺激されて黒目がしっとりと魅力的です。血液の流れも良くて皮膚も紅潮します。恋でなくても仕事に熱中している人も同様です。怒ったらどうなりますか。顔面も緊張でこわばり顔面蒼白。目が釣りあがります。
交感神経・副交感神経どちらの神経が興奮しすぎてもよくなくて、バランスが取れて健康が維持できるのです。
自分で努力していても、思わぬアクシデントで悲しみいかりも避けられませんが、心の平和 愛情豊に仕事に勉強に、家事に努めましょう。

目の病気 角膜篇(2)

先月号で角膜は透明な組織で血管が通らず、栄養は表面の涙液中の酸素、角膜後面はリンパ液の循環で取り込んでいることをお話しました。
外界に面しているから、外傷を受けやすいし、細菌等感染の危険も多い組織です。ただ時代の変遷と共に角膜の病気も変わって来ております。
戦前及び戦後日本がまだ非衛生で、且貧困で栄養も悪いために起こる病気、例えばトラコーマやビタミン不足による角膜軟化症、先天性梅毒による角膜実質炎、麻疹や結核後の角膜炎で角膜に濁りを残して視力の悪い人が沢山ありました。『目にホシが入った』と当時の人は言っておりました。
これらの病気は殆ど見られなくなったことは有難いことです。豊富な食事情と栄養のある体力に恵まれた日本人を痛感します。
一方現代社会生活で新しい角膜の病気が増えております。

コンタクトレンズ障害
CLの歴史はホームページにも書いておりますが、日本に入ってきてもう50年以上になります。
最初はハードコンタクトだけで、材質も悪く、馴れるのに日数が掛りましたが、それでも強度近視や白内障術後で分厚い凸レンズを使用していた方にとっては夢のレンズでした。眼鏡嫌いの婦人にも喜ばれ使用者は増えました。ソフトタイプが出現して、一層広まりました。酸素を通さないために角膜に傷を作り、それもレンズをはずしてから症状が出るので、夜半電話で起こされる事も度々で、救急車で搬送される事もありました。
修学旅行生が夜中痛んでホテルから運ばれてくる事も。そして楽しみにしていた翌日の歌劇鑑賞が出来なかった。という時代もありました。
現在レンズ材質が改良され、酸素も充分通って連続使用も可能になって安全性は格段に上昇しました。更に使い捨てタイプが主流になって余計に使いやすくなりました。但しあくまでも正しい使用法が前提です。
不完全な消毒。使用期限を守らず、ルーズな使い方で角膜障害を起こす例が頻発しております。
細菌感染だけでなく、真菌(カビ)の感染が危険です。
感染だけでなく、レンズの使用でアレルギー性結膜炎を起こし、角膜に影響している例もあります。
レンズの購入を価格だけで決めないで、眼科専門医の検査指導を必ず受けてください。
レンズ使用時に点眼薬の使用の可否を尋ねられますが、これは点眼薬に含まれている防腐剤の蓄積を恐れての事ですが、使い捨てのレンズの場合はそのまま点眼しても大丈夫です。レンズ使用時は乾燥予防のために再三涙と同じ成分の点眼薬を使う事が必要です。
PCを使う事務職のみならず、空調の強い部屋に長時間いる方は、また飛行機内は湿度が30%以下と聞きます。海外旅行時は要注意です。

円錐角膜
角膜の中央が突出して円錐形になる角膜の病気で、原因は不明です。アトピーの方が多いですがアトピーと関係なく起こします。早ければ小学生高年から。思春期に発現する事が多いです。
最初は乱視が強くなってきたかという程度ですが、注意して診察すると、角膜の異常に気付きます。
軽度な時は眼鏡で矯正出来ますが、ハードコンタクトレンズが必要です。レンズも改良進歩して違和感も少なく使用可能になってきました。
重症な時は角膜の移植が必要です。