眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m205

投稿日 2023年3月3日

3月からのマスク

院長 廣辻徳彦

年度の終わりであり、卒業などの節目にも当たる3月です。新型コロナウイルス感染症のせいで中学校や高校の3年間をほとんどマスク姿で過ごしていた学生さんにとっては、たくさんのことを制限された学校生活だったと思います。この13日からはマスクをする、しないを自己判断してくださいと言うのが政府の方針で、卒業式でマスクをどうするのか、親御さんの出席をどうするのか、校歌の斉唱をするのかなどは、各学校の判断に委ねられる様子です。ウイルスと共に過ごしていかなければならなくなった現在、3年前と同じ対応をしていては仕事や生活が成り立ちません。マスク以外のことも少しずつコロナ前の状態に戻ってほしいものです。ただ、厚労省は「医療機関を受診するとき」、「高齢者など重症化リスクの高い方が多く入院・生活する医療機関や高齢者施設などへ訪問する時」、「通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバスに乗車する時(当面の取扱)」にはマスク装用を推奨しています。当院には熱発の人が受診される機会は少ないのですが、高齢の患者さんも多くいらっしゃいます。もちろん強制するものではありませんが、当面のところ、「基本的には院内でのマスク装用をお願いしたい」と考えています。
話は全く変わりますが、「0から9の中でどれか数字を選べ」と言われた時に、皆さんはどの数字を選ぶでしょうか。私は自分が3月生まれのこともあり、「3」を選ぶことが多いです。調べてみると広島大学の人間行動研究講座先生が、学生を対象に調査した文献がありました。「0から9の数字を板書きして、その中で好きな数字を選ぶ」という方法で調査しています。選ばれたのは多い順に「3、5、7」で、少なかったのは「9、1、0」だったそうです。実に5人に一人が「3」を選び、少ない3個の数字は約5%という結果でした。理由は数字の位置(端よりは真ん中に近いところ:板書したから?)、数字の性質(素数や奇数、三本の矢や日本三景などの印象)、縁起(ラッキー7を選ぶ、不吉な数字を避ける)、丸い字の形がいい、好きだから(生年月日)、など様々だったようですが、単純な確率の結果とは違うことに興味が持てます。どの数字が好きかという心理(恋愛)テストも様々あるようですが、これは飲み会のネタ的な印象です。

健康とは!(聴覚障害者の遺失利益)

2月の末に、ヘッドラインに載るような裁判関係のニュースが2つありました。ひとつは昭和59年に滋賀県で起こった強盗殺人事件の犯人とされる人物(無期懲役で服役中の平成23年に病死)の無罪の再審請求の2審の高裁判決です。警察の違法な取り調べによる自白の強要や、起訴をした以上は被告人に有利な証拠を握り潰すという検察に問題があったらしく、高裁でも再審請求を認める判決が出ました。心も身体も通常の生活ができないストレスにさらされる無期懲役のまま病死された人物は本当に無念だったでしょうし、権力側のやり方一つで冤罪が生まれる可能性があることを恐ろしく感じた判決でした。
もうひとつは5年前に大阪で起こった重機による交通事故で、亡くなった11歳の聴覚障害の女の子の遺失利益をどう判断するかという裁判でした。親として子供が事故で亡くなるとはとても悲しいことですし、それに対して金銭でどうにかしたいなど考えるはずはありません。ただ、そういう方法以外で解決をつけにくいこともあるので、民事裁判になるのは仕方がないことかもしれません。裁判の相手(被告)は加害者なのでしょうが、多くは保険に入っているので実際に相手をするのは損保会社ということになります。報道によると、当初被告側(損保会社)は難聴があるので遺失利益は一般女性の収入の4割で計算すべきだと主張し、その後聴覚障害者の平均収入(全労働者の平均の6割くらい)と同じように計算するべきだと主張したそうです。両親側は一般の全労働者と同じ計算をするように求めていましたが、大阪地裁は労働者の平均の85%の計算で遺失利益を計算すべきだという判決を下しました。
今回の場合は聴覚障害の子供さんでしたが、視覚障害や肢体障害などの身体障害、精神障害の場合にも遺失利益の計算には一般労働者から何%かを割り引いて計算されることがほとんどのようです。テクノロジーの進歩やコンピュータ技術、アプリなどの支援で、障害者であるから労働力が低いと一概には言えない時代になってきていますし、将来はさらに技術が進歩すると予想されます。これまで6、7割しか計算されていなかったことに比べれば、今回の判決は半歩進んだものだったかもしれません。多様性を大事にと叫ばれている時代であり、障害者の職業の選択の制限や労務に対する賃金格差は解消されていくべきかと思います。子供の事故はあってはいけないのですが、将来の可能性のある子供に事故があった場合には、遺失利益をもっとプラスに考えて欲しいものだとも考えた判決でした。