眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m192

投稿日 2022年2月4日

如月の和歌

院長 廣辻徳彦

毎年同じことを書くのですが、新年が明けてもう1ヶ月が過ぎてしまいました。1年の12月は睦月、如月、弥生、卯月・・・という別名があり、2月は如月と言います。明治6年に太陽の動きを基準となる新暦(グレゴリオ暦、太陽暦)に変わるまで、日本では月の動きが基準となる旧暦(太陰太陽暦)で生活をしていました。月の満ち欠けはおおよそ29.5日周期なので旧暦では1年が約354日となり、3年ほどに1度「閏月」を入れて調整していたようです。暦の話はそれだけで紙面を取ってしまうのでこれくらいにしておきますが、旧暦の1月1日は新暦に当てはめると1月下旬から2月下旬ごろの計算です。
如月といえば西行法師の詠んだ「願はくは 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月のころ」という有名な歌があります。古典で花といえば一般的に「桜」のことを指します。現在のお花見で有名なソメイヨシノは、江戸時代後期にエドヒガンとオオシマザクラの自然交雑か人工交配でできたとされています。西行の暮らした平安時代から鎌倉時代であれば、ヤマザクラ系かヒガンザクラ系の桜だったと思われます。望月は満月の意味なので「如月の望月」は旧暦の2月15日なのですが、2月15日はお釈迦さまが入滅された日です。「死なむ」の「む」はこの場合は意思を表す助動詞です。歌の意味は比較的わかりやすく、「できることなら(お釈迦さまも亡くなられた)2月の満月の頃、満開の桜の下で逝きたいものだ」という現代語訳になります。西行はその当時としては73歳という長寿を全うしています。この歌は西行が60歳過ぎの時に詠まれた歌とされているのですが、西行は2月16日に亡くなっています。この歌で望んだ15日と1日違いであったことから、その当時も感動と共感を呼んだとされています。
さて、月にはどのようなイメージをお持ちですか。神秘的な感じ、ムーンやルナ(ラテン語:ローマ神話の月の女神「ルーナ」)という少し格好が良さそうな響き、ウサギがいたりかぐや姫の故郷であったりするお伽話的な感覚などでしょうか。月に代わってお仕置きをするセーラームーンは外国でも人気があったようです。日本人は良い印象を持ちがちですが、西洋では月を意味する「lunatic:ルナティック」という言葉は「キレイに輝く」という良い意味でなく、「狂った」、「狂信的」、「常軌を逸した」というかなり悪い印象の形容詞や時に名詞として使われます。所変われば言葉の印象も変わる、面白い現象といえます。

健康とは!

新型コロナウイルス感染症のせいで、いろいろな会が開催できにくくなっています。結婚式のキャンセルは以前に比べて話題に上ることが少ない様子ですが、飲食を伴ったり歓談したりすることが目的の同窓会などは開催が控えられていると推察されます。年齢を重ねてくると、同窓会も病気自慢になりがちになると聞いたことがあります。本当に病気でしんどい思いをしている時には出席などできませんから、病気自慢ができることはそれなりに健康の裏返しと言えるかもしれません。
最近私自身も病院を受診することがありました。一昨年に不整脈が出てCTや心電図などの精査をしてもらったのですが、これとは別に肥満傾向にあること、魚より肉を食べる傾向にあること、よく酒を飲むこと(喫煙はしません)、父に既往があること(=家族歴+)など大腸ポリープのリスクが高いことを消化器内科医の妻に指摘されていました。大腸ポリープの中には、大腸ガンになるリスクの高いタイプもあることが知られています。機会がないと言い逃れをして検査から逃げていたのですが、先日妻が便潜血反応の検査キットを持って帰ってきたので、さすがに一度は検査をと思い行ってみたところ、結果が陽性と出てしまいました。「便潜血陽性」=「大腸ガンの確定診断」となるわけではありませんが、その可能性が3-4%はあると言われています。そこで、子供の頃ケガで何回かお世話になった南口のクリニック(あちらもこちらも2代目です)の先生にお願いし、大腸内視鏡検査をしていただきました。結果、大腸ポリープが見つかりその場で切除をしていただくことができました。1週間後の組織検査の結果で、ポリープ内と切除した断端にはガン細胞が見当たらず、「腺腫」という診断がつきました。悪い場合の可能性も考えていたので、一安心しているところです。
今回、私自身はすぐにどうこうなる病気ではなくてすみました。わずかではあっても健診という行為にもリスクはありますし、CTなどによる被曝を無視してよいわけではないので、病気を心配するあまり多くの検査をしすぎるのは考えものです。しかし、症状がなくても内視鏡の検査をして、もしくはレントゲンやCTを撮って進行ガンが見つかるということも珍しいことではありません。相応の年齢になれば、健診を考える意味は十分にあると思います。どうしても億劫になりがちな健診ですが、機会があれば一度は受けてみることを考えてはどうかと思った出来事でした。