眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m17

投稿日 2007年7月1日

暑中お見舞い申します

理事長 廣辻逸郎

今年は梅雨の雨が少なくて、余計に夏の暑さが厳しいと気象予報士が予想しております。
しかし冷房の完備で乗り物や売場社屋何処に行っても暑さ知らずで快適です。図書館もリタイヤした団塊の世代で満員です。電車に冷房がなかった頃、暑くなったと感じる早々に目に鉄粉をいれて涙ボロボロの患者さんが何人か来院されたものですが、それが無くなって眼科医は大損害です。窓を開けると、電車が停まった時に車内や線路の風が舞い上がって目に入りやすくなるのです。余談になりますが、宝塚市内にベアリング工場や小さな鉄工場が無くなって、角膜異物針の出番が少なくなってきました。こんなところにも時代の変遷を感じます。
さて夏は祭です。京都の祇園さん大阪の天神まつりで夏も最高です。私は大阪江戸堀生まれで、天神祭の川渡御のある土佐堀川が近かったせいか、本物のお迎え船が出るまでに飾りをつけた小さな船が往き来するのを橋の上から何度も見に行った覚えが懐かしいです。
おっちゃんはカンカン帽にジンベ(甚平)の上下、そして腹巻。薄い黒の絽を羽織っていました。おばちゃんはアッパッパです。ええし(上流)の奥様は勿論着物です。扇子・団扇が唯一の冷房機です。子ども達も昼間は広場で野球に汗を流し、両端を石の重みの糸での蜻蛉釣に興じました。夕方には川辺で蝙蝠を干し竿で落し、多くは盥の行水です。夜は屋根の上の干場で涼みながら天の川を眺めました。
クーラーの効いた部屋でコンピューターを前に誰にも拘束されずに独りでゲームに興じる大人やこどもの現状に些かの不安を感じます。
暑い夏ですが大粒の汗を流して元気に乗り越えてください。

健康とは! 土用の丑の日には鰻を食べよう

平賀源内が魚屋のコマーシャルをしたということですが、夏負けしないための第一要件は夏の暑い時期にも規則正しい食事を摂取することと私も日頃から力説しているところです。
暑さで体力も落ちて、つい冷たくて口当たりのよいものに偏り勝ちですが、充分な栄養素の不足が体力の衰えに拍車をかけて余計に夏負けに陥ります。
戦前の日本人の食事内容は確かに貧しくて、芋・麦・米等澱粉類の摂取が主でした。魚も鰯や干物が主でした。肉・魚を毎日食べる習慣は戦後も1950年以降で無いでしょうか。
日本人の寿命が世界一にまでなった要因の一つは確かに食事内容の改良でしょう。最近特に高齢の方々が元気だなと感じます。逆に若い世代の体力に不安を覚えます。
食料自給率が40%を切るといわれても、店頭には食品が山と積まれ、一方食品の廃棄量も唖然とする量と聞きます。もう丑の日でなくても、鰻は気楽な料理の一品になりました。
ただ危険な薬品や添加物を使用した中国産食品。何の肉かミンチにすれば判らないと不正をしていたミンチ業者。司法の頂点、治安調査の元締めの最高位に在職した人物が国法を犯す時代ですから世の中おかしくなっても仕方ないのでしょうが、産地の確かな食品を自分で調理して食べるのが一番贅沢な食事の時代になって来たのでしょうか。

はやり眼

学校のそばを歩いていますとプールから子ども達の賑やかな声が響いてきました。今年も暑さが厳しいと予報されています。それだけに子ども達もプールが楽しみでしょう。そのプールに行けなかったり、はやり眼をうつされてはたまったものではありません。今回は流行性急性結膜炎(はやり目)について記します。プールでうつるとが多いのでプール熱とも言われています。
流行性急性角結膜炎
はやり眼のなかでも一番症状の強いタイプで昭和30年初め日本眼科学会の特別講演でM教授が講演されたことが思いだされます。
アデノビールス8型による感染を流行性急性角結膜炎といいます。(ビールスは同じビールスの中に幾つも型があります。ポリオビールスが3型あるように、このアデノは1型から30数種型あります)
潜伏期間は5日~7日で急に充血し、目脂より涙が多いです。耳の前のリンパ腺が腫れます。結膜炎症状は約1週間で軽くなってきますが、その頃から角膜(くろ目)にホシが入ってきて痛み、眩しさが出現します。子どもは発病後結膜に偽膜といって白い膜が出来て、剥れると出血します。
角膜のホシは数ヶ月後にはとれますが不愉快なものです。
咽頭結膜熱(プール熱)
文字どうりのどが赤くなって、熱が出て結膜炎が始まります。アデノビールス3・9・11型が原因です。小児科耳鼻科を初診されることが多いですが、伝染について充分注意してください。
プールの時期に流行することが多いのでプール熱と言いますが、年中散発しております。
急性出血性結膜炎(アポロ病)
前の二者と原因ビールスは別で、アポロが宇宙に飛んだ1969年、アフリカから急速に全世界に流行したはやり目です。潜伏期間が24時間以内で翌日には他眼にそして家族中にうつります。
白目に出血し、角膜にも表層炎が出ます。初めてこの患者さんを診たときの印象は今でも忘れないほど強烈でした。日本にも宝塚にもまだこの伝染病の認識がなかったのです。学会で問題視される前に患者さんを診たわけです。数日で治癒しますが,非常にまれに四肢の麻痺の報告があります。
最近このタイプのはやり目を診ることは少なくなりました。
診断
臨床症状でほぼ診断出来ますが、インフルエンザと同様診断キットが開発されたのでアデノ感染か否かの診断が容易になりました。
治療と予防
このビールスに直接効果のある薬品はありませんが、細菌感染を予防し、炎症を押さえる点眼薬を使用します。治療以上に予防が必要です。

1.先ず手洗いの励行です。流水でよく手を洗いましょう。
2.ビールスは熱に弱いです。ハンカチタオルは熱湯を掛け、(熱湯に5分したした後)洗濯。
3.アルコールでドアのノップや患者の触れやすいところを拭きましょう。
4.学校・会社は休みましょう。人ごみに出ることは控えましょう。
5.感染は空気感染でなく、手から手です。目を触らぬことです。

はやり目に限らずこれから食中毒も多発しやすい時期です。細菌もビールスも目に見えません。
私達医療従事者からみると皆様方の伝染病予防に対しては、はらはらで、注意している端から、はいはい解りましたとハンカチで目を拭いておられます。神経質と言われるぐらいでよいのです。
流水で丁寧に手を洗うことは消毒の基本です。