眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m169

投稿日 2020年3月2日

新型コロナウィルス

院長 廣辻徳彦

前回のマンスリーは1月中に原稿を書いていたので、新型コロナウィルスには気をつけないといけませんと書いていましたが、2月のニュースでは、新型コロナウィルス関連の話題を聞かない日はありませんでした。中国と客船ダイヤモンドプリンセス号での集団発生を別にすれば、2月末の時点で感染者数は韓国、イタリア、イラン、日本の順で増えています。韓国、イタリアでの急激な感染者の増加には驚くばかりですが、日本各地で感染経路がわからない陽性例が増えていて、もはや中国人と接触したかどうかは関係ない様相です。かなり前から民間機関で検査を進めればいいという指摘を受けながら、なぜ対応ができないのかという疑問も取りざたされていますが、今後検査数が増えれば日本での感染者数も増加するでしょう。客船から検査の陰性者を降ろした後、隔離もせずに公共交通機関で帰宅させてよいと誰が決めたのか不明ですが、理解に苦しむ判断でした。実際に帰宅してから陽性反応が出た下船者も、複数名報告され出しています。「正直に検査して患者数が増えれば東京オリンピックの開催が危ぶまれるので、それを危惧して検査をしない」という噂すら耳にしますが、オリンピックが中止になることもありえることです。
2月26日に政府がイベントの中止・延期要請をした途端、各地でコンサートなどが中止になりました。数千人以上が一会場に集まるコンサートの中止は頷けますが、毎日の通勤電車も似たような状況と言えます。3月からは小中高校の休校も要請されました。働いている親御さんには負担がかかることと思います。今後私たちは自分で身を守ることを考えなければなりません。結局は無用に人の多いところに集まらない、自分が感染したかもしれない場合は自宅に待機、手洗いを励行する、ということになります。熱は出ていたけれど試験監督をした、体調は悪かったがバスの運転をした、など仕事を休めない環境で無理をしがちな日本人の行動が、感染を広げることにつながる可能性があります。
すでに全世界での流行=パンデミックに近いと危惧している感染症の専門家もいます。世界の経済にもダメージを与えている今回のウィルス感染が、3月中に収束するのは難しいかもしれません。おかしな情報には惑わされないようにしつつ、ご自身とご家族を守るように気をつけてください。

健康とは! -高額な新薬-

コロナウィルス の話題に隠れがちですが、先日超高額の治療薬が厚労省の保険部会で認められ、健康保険に収載されることが決まりました。「ゾルゲンスマ」という小児に発症する脊髄性筋萎縮症という病気の遺伝子治療薬で、米国での価格が1本2億円以上するという薬です。国内では2番目の承認となる遺伝子治療薬ですが、第1号の「コラテジェン」という薬が1回60万円で2回(もしくは3回)使うことと比べると、途方もない金額と言えます。脊髄性筋萎縮症は遺伝性の疾患で、日本人では10万人に1−2人の割合(換算すると毎年10人程度)で生まれ、体幹と四肢の筋肉の萎縮症状で発症します。程度も様々ですが、重症型では生後2歳までに死亡してしまう病気です。ゾルゲンスマは1回きりの投薬でほぼ全例で一生持続するという効果があるらしく、治療薬としては本当に素晴らしい効果が期待できる薬なのですが、日本での価格がどれほどになるかが注目されます。
ただ、もしすべての患児にこの薬を使うとすると、米国価格のままだと10人で20億の費用が保険で支払われることになります。子供の介護費用、ご家族の負担などを考えればそれに値する額とは言えますが、医療費にも限りがあるのでその分をどこかから減らす必要に迫られることになります。日本の健康保険制度は、ほぼすべての国民に行き渡っている皆保険制度で、このおかげで外国に比べると比較的安い負担で平均的な治療を受ける事ができます。しかし、あまり病院にかからない世代の人にとっては、保険料を支払うばかりで自分に恩恵がありません。保険治療として認められていない治療を求めると、自費扱いとなり負担が大きくなります。医療費の予算の中には、医師だけでなく看護師、薬剤師、事務職員など医療関係で働く医療スタッフの人件費や材料費、検査費や薬剤費、医療機器にかかる費用など全てが含まれます(病院の建築費も)。毎年新薬や最新鋭の機器が数多く開発され、保険適応されれば予算に食い込みます。「できるだけ最高の治療を少ない負担で」というのが理想ではありますが、予算に限りがある以上、医療費は上手に分配して有効に使ってもらいたいものです。