眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m162

投稿日 2019年8月1日

悲しい出来事

院長 廣辻徳彦

平年より19日遅く梅雨入りした近畿地方の梅雨明けは、わずかに3日遅いだけでした。欲しい時に欲しいだけ雨が降るのであればよいのですが、梅雨に台風が重なった九州地方では大雨が続き、科学の進んだ現代でも自然の力の前では人間の力が小さいものだと思わされました。昨年の広島のような大きな被害はなかったとはいうものの、災害に対して忘れがちになる日頃の備えについては考えておかなければいけません。
自然だけでなく、人間は常識では予期できない暴力に対応できないこともあります。7月18日に京都アニメーションで起こった事件は、世界中に大変な衝撃を与えました。被害者とご家族、関係者の皆様のことを考えると本当に胸が痛くなります。防火体制や避難路など改善の余地がなかったかどうかという意見も後から耳にしましたが、ガソリンを撒き散らして火を付ける、当然自分にも害が及ぶことがわかった(犯人はそれすら理解できない状態だったのかもしれません)上で凶行に及ばれては、防ぎようはなかったでしょう。
それでも、この悲劇に全世界からたくさんのメッセージと共に多額の寄付金が集まっているニュースを聞くと、この会社の制作するアニメがどれだけの人たちに愛されているのかがわかります。「アニメなんかくだらない」と考える人もまだいらっしゃるかもしれませんが、今や日本文化の中で、アニメは私たちが感じているよりも世界に影響を与えているコンテンツと言えます。京アニはその日本の中でトップクオリティの作品を数多く提供し続けてきた会社であり、クリエーター集団なのです。映像のように見える透明な水の流れ、吹奏楽の音と一致して動く演奏者の指先、反射して映り込む景色まで描かれる金管楽器、そんなアニメを作りだせるのは京アニしかないとも評価されています。たった一人の蛮行で、これからもたくさんの作品を生み出したであろう優秀な才能が数多く失われたことは大変な損失であり、本当に残念なことです。アニメだけでなく、文学、演劇、映画などは、心に余裕があるその上で楽しめるものなのでしょうが、つらい時や苦しい時に「縁(よすが)」となってくれるものでもあります。京アニの皆さんに頑張ってくださいなどと簡単には言えませんが、いつかまた素晴らしい作品を送り出してくれる日を待ちたいと思います。
改めて、犠牲者のご冥福、治療中の皆様のご回復、ご家族と関係者の安寧をお祈りいたします。

健康とは!(お酒:アルコールの害)

私自身が「タバコを吸わず、お酒は飲む」という人間なので、つい酒には甘くタバコに対しては批判が強くなってしまいがちですが、酒=アルコールの害も強く意識しないといけない問題です。タバコとアルコールの害を比べる時に、「タバコを吸って罪を犯す人はいないけれど、アルコールで酔って罪を犯すことは多い」、とタバコを擁護する説があります。確かに酔ってケンカをしてケガをさせる、時に殺人事件に発展する、飲酒運転で事故を引き起こす、ひき逃げをするという事件はタバコでは起こりません。もちろん、喫煙者、飲酒者自身に及ぼす健康被害の面で考えると、実質的にはタバコがより大きな害を引き起こすのですが、直接的な人と人とのトラブルを引き起こすのはアルコールの大きな問題です。すなわちアルコールは、健康に関する問題として飲酒者の身体に及ぼす影響と、酩酊が自分や他人に及ぼす影響についての二つの問題を考える必要があるということです。ここは健康についてのコラムですので、後者についての問題はまた別の機会に譲ることにします。飲酒運転や酔っ払ってのケンカは犯罪もしくはほぼ犯罪なので論外ですが、忘れ物をする、駅を乗り過ごす、記憶が途切れている、二日酔いで後悔するという経験は、間違っても自慢できるものではありません。
アルコールの害もタバコ同様数多くあります。タバコは乳幼児が間違って食べでもしない限り急性中毒を引き起こすことはありませんが、急性アルコール中毒の場合、時に死に至るケースがあるのはご存知の通りです。40年近く前のことですが、私自身大学のクラブの新歓コンパでは、中華料理のデザートの杏仁豆腐が入っていた大きな器一杯にビールと日本酒などを混ぜた飲み物を入れられて、一気飲みさせられました。同級生の一人は、大学病院で点滴を受ける始末でした(当直はクラブのOBでしたが)。今なら間違いなくアルコールハラスメントであり、犯罪行為です。アルコールは、肝臓病やすい臓病の原因となりますし、様々なガン、循環器疾患、精神疾患を引き起こすだけでなく、タバコと同じくアルコール依存症という病気まで引き起こしていると言えるのです。(続く)