眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m16

投稿日 2007年6月1日

格差ということ

理事長 廣辻逸郎

毎年春の学校身体検査も無事終わりました。最終検診校のs小学校は各学年2クラスでこじんまりしています。子ども達は当日少し暑かったこともあってもう半袖の子もいました。どの子も礼儀正しく「お願いします」「有難うございました」と挨拶します。特に先生がそのようにしなさいと注意されたわけでもありません。
みんな洗濯のきいたさっぱりとした服装で清潔感も一杯。明るい表情です。検診前、ある先生が水槽のメダカと学校の庭で孵ったばかりの小さな蛙を見せて下さいました。甲山を背に、緑豊なまだ自然の残っている地域で育つこどもはどんな大人に成長してくれることでしょう。
廊下に貼り出されている版画や習字のどの作品も素晴らしく感心します。運動のできる子、上手に絵を書く子どの子も夫々に素敵な能力を持っているのです。
“出来る子出来ない子。”“勝組負け組。”その他色んな表現で最近人に格差をつける傾向があります。
以前は強きを挫き、弱きを助けると言った風潮がありましたし、金持ちもつつましく暮らしていました。日本の国格も落ちたと指摘されていますが、日本人自身の品格が格段に落ちたと認めざるを得ません。
これだけ物質的には満たされて、何一つ不自由なものはありません。しかし心の貧しさはとても酷くて目も当てられません。戦後占領軍が日本の教育を米国式に強制した効果が出てきたのでしょう。それに小泉総理時代の官邸主導、経済人重視の改革会議で、米国経済の洗礼を受けた学者や経済人の意向が強力に政治を主導した影響と私は思います。
医療は弱者の視線で施策されなければなりません。しかし、経済人から見ればこれほど無駄なものはないと映るのでしょう。死ぬ人に何でお金を使うのか。貧乏人に高価な薬品を使う必要はない。金持ちが自由に最高の検査と治療を受けてなんで悪いのか。その為に自分は個人保険に入っている。貧乏人の分の費用をなんで負担しなければいけないのだ。格差をする人は人格を差別する貧しい心の持主だと私は理解しています。

健康とは! 目には青葉山ほととぎす初鰹 素堂

新緑眩しい6月に入りました。黒潮に乗って東上する鰹のはしりを江戸っ子は高価であるのを競って賞味したのでしょう。この句は目に青葉と、ホトトギスの鳴声の視覚と聴覚を入れて新鮮な鰹の澄んだ瞳やみずみずしい背筋の模様まで詠んでおります。
食べ物は味覚だけでは美味しさが判りません。視覚と聴覚が大きく影響します。食物の新鮮さ、色合い形状、そしてそれらを盛った器によって食欲が違ってくることは言うまでもありません。生唾を飲むと言います。視覚を通じて自律神経が働きます。自律神経は聴覚の影響も大いに受けます。気に入ったBGMも楽しい会話も、楽しい時は唾液の分泌が増え、食道・胃・腸等消化器の働きも活発で、美味しく消化もよく体に吸収されます。気まずい思いで、或いは叱ったり叱られながらの食事は砂を噛むようと言います。消化液の分泌も悪く、消化器の動きも悪くて全く栄養になりません。
DHA・EPA・ケルセチン・シアニジン等々栄養素を横文字で覚える必要はありません。シアニジンが豊富だから黒豆を、ケルセチンがあるから鰯を食べるのでなく、どの食品にも、価の高低に関係なく体に必要な要素を含んでいます。いろんな食品を偏ることなく、適量を楽しく有難く頂戴することが健康に通じると、今も昔も変わらぬ至極平凡な健康の基本です。

緑陰雑話

何時も硬いことばかり書いて面白いこともなんにもありませんが、今月は気楽に雑談で紙面を埋めることをお許しください。
最近元気なお年寄り
最近高齢者(70歳以上)特にご婦人がとても元気になられたように感じます。診察に見えるのですから一応患者さんですが、診察時にカルテに記載の年令を見て“えっ”と驚くことがしばしばで皆さんがとてもお元気です。服装が派手になったこともありましょうが、肌の色艶もつやつやで血色がよろしいです。化粧品に余り興味のない内のばあさんに聞いても無駄だから聞きませんが、化粧品も随分と好くなっているのでしょう。それ以上に女性上位は全女性に及んでいるのでしょう。
奥さんに付き添ってくるご主人より、主人に付き添ってこられる奥さんの方が多いのは事実です。
お友達とお食事をして来た帰りですと、先日も亭主を見送った未亡人(もう死語になったかな)が来院されました。政府は年金を今以上に積み立ててもらはないといけませんね。
最近読んだ図書
前にもNHK深夜便のリスナーで楽しんでいると書いたことがあります。面白い話や専門外の方の薀蓄を聞くととても得をした気がしますし、聞き損なうとえらく損をした気になります。聞きながら寝てしまう事がありますから仕方ありませんが。
先日は柳沢嘉一郎氏の話がありました。遺伝専門の生物学者で、ヒトは、自分が生き残るためのいわば利己的な遺伝子をたくさんもっているが、他人のことを考慮する利他的な遺伝子ももっているとアンカーと話されていました。
ご自分の家庭の話から、父親は息子とは父と子だけれど、母親にとっては子どもは自分の分身だと話されていました。PCで“ヒトという生きもの”という著作があるので早足取り寄せました。雑誌に連載されたエッセイを纏められた日本エッセイスト・クラブ賞を受けておられます。
生物としてヒトの宿命と性質を考え、過密社会がもたらすもの、戦争の起源、睡眠と記憶の不思議、アイスクリームの階級から美人が好まれる理由など遺伝子の話も交えて興味深い。
中でも記憶の項で、奥さんが宛先の住所を覚えるのに、差出人の住所を一度見るとそのまま頭に残っているのだと。英語の宿題もリーダーを読むと、そのままページが記憶されるのだと。100人の学生に昨夜の食事の内容を聞くと、80人の男子学生のほとんどは答に詰まったが、女子20人のうち3人は目の前に食卓が見えたと言ったと。記憶の仕方が私のような頭の悪い人間とは違う構造に驚き感心する次第。
もう一人皆さんもよくご存知の東京農大教授小泉武夫氏が話されていた。発酵学の話をされる時の得意満、面口角泡を飛ばすという状況はテレビでもご覧になったことでしょう。“発酵は錬金術である”を購読しました。
発酵学の智識を元に、マイナスをプラスにする発想その他発酵を錬金に変えるユニークな話を一気に興味深く読了しました。
先日の新聞に、捨て場所に困っていた焼酎の絞り粕を麹菌の利用で飼料に転換し、黒豚も丸々と美味しくて全国に好評販売されていると出ていました。
ゴミがリサイクルされて有用な食品や肥料・飼料になって地球環境にも好影響を及ぼすことは、とても嬉しいことです。
半藤一利氏の昭和史・昭和史戦後編も興味深い著書です。半藤氏がご自分の成長と昭和の時代がほぼ同じだっただけに、終戦までの昭和史と戦後の昭和史。共に私も同時代だけに共感を持って読むことが出来ました。特に戦争に至るまでの日本の歴史を記した前編は、昭和天皇の苦悩、指導者の動き、そして私はラジオや新聞のメデアの役割と怖さを痛感します。残念ながら新聞テレビは決して真実を伝えるものでないということ。最後に涼しい話を壊してしまいました。