眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e99

投稿日 2016年8月1日

紫外線と眼

院長 廣辻徳彦

7月下旬、あのNHKでも「ポケモンGO」のニュースを毎日放送していました。欧米で先行して、日本でスマートフォン用アプリとして瞬く間に広まった「ポケモンGO」。もともとは、その昔(約20年前)、いわゆるゲームボーイが発売された頃から人気だったゲームです。当時は「赤」と「緑」のカセットでしたが、子供にせがまれて幻のポケモン「ミュウ」も含めて全151種類を集めたものです。今回の「ポケモンGO」は外を歩き回らなければならないので時間的に無理ですが、アメリカでは全部集めるために毎日歩いて、結構なダイエットになった人もいるようです。しかしながら、歩きスマホで迷惑をかけてはいけませんし、この時期熱中症や日焼けも心配です。
今回は、夏の日焼けの原因となる「紫外線」と眼についてのことを書いてみます。紫外線といえば、以前は「小麦色の肌」や「日焼けした元気な子供」など健康的な意味合いを持つものでしたが、現在ではむしろ「お肌の敵」、「シミの原因」など避けるべきという印象が強くなっています。紫外線にはビタミンDを生成するという大切な役割があって、ビタミンDが慢性的に不足気味であるという報告がある日本人にはほどほどに必要ですが、オゾンホールの影響なども考えられる昨今、基本的には避けるようにするのが良いと考えます。
そもそも紫外線とはどういうものなのでしょう。私たちが目にする光は可視光線と言い、およそ400—800nm(ナノメートル:1メートルの1,000,000,000分の1)という波長の光です。それより長くても短くても目には見えないのですが、より短い波長が紫外線でより長い波長を赤外線と呼びます(図1:オリンパスHPより引用)。

赤外線よりも長い波長のマイクロ波や電波(ラジオ波)、紫外線よりも短い波長はX線やγ(ガンマ)線で、紫外線もUVA、UVB、UVCに分けられます(図2:コーセーHPより引用;赤外線が赤、紫外線が紫で示されていますが、実際には色はありません)。光は波長が短いものほど反射しやすく遠くまで届きにくいという性質なので、UVCはほとんど地表に届きません。UVBわずかしか地表に届かない代わりに肌への影響は強く、日焼けや炎症、シミの原因となります。UVAは地表に届く紫外線の9割を占め、皮下のメラニン色素細胞を活性化させます。
紫外線は眼に悪いと言われていますが、紫外線は波長が短いのでほとんどが角膜や結膜で吸収されます。水晶体より奥に、特に網膜まで届くのはUVAの中で可視光線に近い波長の部分だけです。角膜への影響では、電気溶接を保護メガネなしで行った場合に生じる「電気性眼炎」や、春山でスキーをする際にゴーグルやサングラスなしで生じる「雪目」などが有名です。紫外線の強いエネルギーが角膜の細胞にダメージを与えて、角膜炎を生じてしまうのです。紫外線の強くなる5月ごろからは、サッカーや野球など屋外でのスポーツをして結膜が充血する子供さんが来院されます。影響は人によって違いますが、紫外線による結膜炎です。翼状片という病気にも影響していると考えられています。理髪店などで使われるカミソリの消毒に、青く光っている箱を見かけたことがあると思います。紫外線が微生物のDNAに影響を与えて増殖を防ぎ、さらに当てると細胞までを破壊するという原理です。長く見ていると「雪目」と同じで角膜の細胞も障害されるので、見つめていてはいけません(そこを見ないように青い色が付けてあります)。黄斑変性症などの病気には、可視光線の中の短い波長である青から紫の波長(紫外線で波長の長いところも含まれ、合わせて「ブルーライト」と呼ばれます)が影響を与えると考えられています。網膜への影響を防ぐには、紫外線カットが重要なのではなく、「青から紫」の補色である、「茶色、黄色、オレンジ色」系のサングラスがよいと思われます。短い波長の光はまぶしさの原因にもなるので、その部分の波長をカットするように作られた遮光眼鏡や、PCメガネも有効でしょう。紫外線とも上手に付き合いたいものですね。