眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e98

投稿日 2016年6月30日

めまいは「目」から?-その2-

院長 廣辻徳彦

前回は「めまい」について書きましたが、

和歌山由良のわかめ干し

  1. 回転性めまい:目がぐるぐる回る(自分自身や周囲が回る感覚)。
  2. 浮動性めまい:よろめく、フワつく、まっすぐに歩けない、姿勢が保ちにくい。
  3. 立ちくらみ :立ち上がると目の前が暗くなる、失神してしまう。

と大きく3つの分類ができることまで書きました。一部重なりますが、今回はそれぞれをもう少しずつ解説します。
「回転性めまい」は比較的急性に起こり、周囲がぐるぐる回っている感覚を伴います。耳に原因のあることが多く、耳が聞こえづらい、耳鳴りや耳閉感、吐き気などの症状を伴うことがあります。聴覚に関係する内耳の蝸牛という部分に障害がおこると、難聴などの症状が出ることもあります。回転性めまいを生じる病気は様々ですが、その中でも「メニエール病」は有名かと思います。この病気では、内耳というところを満たしている内リンパ液が増加し(この状態を内リンパ水腫といいます))、耳鳴りや難聴を伴ってめまいが生じます。数時間から丸一日以上続く場合があり、この発作を繰り返すことで次第に聴力が失われてしまうこともあります。「良性発作性頭位めまい症」はめまい患者の30%程度を占め、耳が原因で起こるめまいでは最も多いといわれています。起床時や急に頭を動かすことがきっかけでめまいが起こります。めまいは数秒から数十秒くらい続きますが、多くは時間の経過とともに症状が軽くなって行きます。もともと内耳の前庭というところにある耳石が脱落し、三半規管に紛れ込んで異常を生じることが原因です。他にも、風邪などのウィルス感染や血液循環障害によって生じる「前庭神経炎」、中耳炎から内耳への炎症の波及や、突発性難聴なども回転性めまいの原因となります。また、平衡感覚には耳だけでなく脳、特に脳幹や小脳というところが大事な役目を果たしています。脳梗塞や脳出血、椎骨脳底動脈の循環不全などが原因になることもあるので、耳以外の検査も必要となります。
「浮動性めまい」は急性に生じることも、徐々におこることもあります。脳の異常が原因となることが多いのですが、回転性めまいの慢性期や回復期にも生じます。ぐるぐる回るというより、ふわふわ感じる、まっすぐに歩けない、姿勢を保てないなどの症状が出ます。脳に原因がある場合は、頭痛を伴う、顔面や手足のしびれ、運動麻痺が生じることもあります。耳からの情報を脳に伝える聴神経というところに腫瘍ができ(=聴神経腫瘍)、それが平衡感覚などを伝える前庭神経や顔面神経、小脳などまで圧迫すると、めまい、耳鳴り、顔面の違和感や難聴、頭痛などを引き起こします。
「立ちくらみ」は言葉どおり、立ち上がりにくらっとしてしまうものです。具体的には目の前が暗くなったり、時には失神してしまったりします。一過性で問題とならない場合もありますが、全身的な病気が隠されている可能性もあるので注意が必要です。高血圧症で急に血圧の上昇があった場合にはめまいのような症状を感じますし、血圧が高い状態から薬を使って急に血圧を下げた場合にもふらつきを感じることがあります。ベッドからもしくは座っているところから立ち上がった際に、一過性に血圧が下がる起立性低血圧でも立ちくらみが起こります。他にも身体の病気では、不整脈がある場合に脈が乱れて脳への血流量が低下したり、糖尿病を患っている場合に食事や薬のタイミングがアンバランスになってしまって低血糖が生じてふらついたりすることもあります。ストレスや心配事などが心理的要因となって、めまいや食欲不振、肩こりなどいろいろな症状が出ることもあるのです。
ここまで読んでいただければ、多くの「めまい」が「目」から起こるものではないことがお分かりいただけたかと思います。めまいが生じている時に、眼球が一定方向に揺れる眼振という症状を伴ったり、物が二重に見えてしまう「複視」という症状を「めまい」と勘違いされることがあったりすることで、眼科を受診されることもあるようです。めまいとともに、「耳鳴りや難聴など」の症状があれば耳鼻咽喉科で、「手足のしびれや麻痺感、頭痛など」があれば神経内科や脳神経外科でご相談されるのが良いと思われます。