めまいは「目」から?-その1-
院長 廣辻徳彦
だんだんと日差しが強くなり、すでに気温が30℃を超える日もでてきました。これから「梅雨」をはさんで、また暑い夏がやってきます。「目もくらむような暑さ」とよく言われますが、今回は「めまい」について考えてみます。「めまい」は漢字で、「目まい、眩暈、目眩」などと変換されます。どの漢字にも「目」がついています。よく「めまい」で眼科を受診される方もいらっしゃいますが、「めまい」とはどんなものなのでしょう。
ひとことで病気を説明するのは難しいことですが、私たちの身体は、無意識のうちに自分の姿勢や動作のバランスを正しく保つようにしています。このバランス感覚は内耳(耳の奥の部分)というところにある三半規管や前庭(耳石器:耳石が入っている)から入る平衡感覚や、眼から入る視覚情報、筋肉の働きなどから入る情報が、脳幹や小脳というところで受け取られ、処理された情報があらためて身体の各部位へ伝達されることで成り立ちます。この情報の入力系統のどこかに異常が生じると、「めまい」が起こってしまうのです。
内耳というのは下図のような構造をしています(日本耳鼻咽喉科学会HPより引用)。ここにある三半規管は3つの半円形の管でできていて、それぞれが90度の角度でつながっています。内部にはリンパ液というものが入っていて、身体が動くとリンパ液の流れが変わるのでその動きを感じることができます。前庭(耳石器)というところには耳石という小さな粒状の石(成分は炭酸カルシウム)が入っていて、重力や遠心力によって石が動くことで身体の傾きや重力、加速度を感じることができます。すなわち、三半規管や前庭(耳石器)に何らかの異常が生じてしまうと、身体のバランスが保ちにくい=「めまい」が起こってしまうということです。眼から入る情報も大事です。遊園地にあるビックリハウス(トリックハウス?)をご存知でしょうか。のぞき穴からのぞくとで大人と子供の背の高さが逆転してしまう変な部屋です(「エイムズの部屋」といいます:白浜エネルギーランドHPより引用)。この写真を見ている視点からはゆがみのない部屋に見えますが、実際の部屋は傾いていたり壁が斜めになっていたりするせいで、まっすぐ歩けない人もいるぐらいです(この理屈は白浜エネルギーランドのHPを見てください)。
「めまい」は症状や原因部位などによっていろいろな分け方があるのですが、今回は以下のように分けます。
- 回転性めまい:目がぐるぐる回る(自分自身や周囲が回る感覚)
- 浮動性めまい:よろめく、フワつく、まっすぐに歩けない、姿勢が保ちにくい
- 立ちくらみ :立ち上がると目の前が暗くなる、失神してしまう
「回転性めまい」は比較的急性に起こり、耳に原因のあることが多いようです。いわゆる「めまい」という自分や周囲がぐるぐる待っている感覚で、耳が聞こえづらい、耳鳴りや耳閉感、吐き気などの症状を伴うことがあります。耳に原因がある場合は、内耳の部分に聴覚に関係する蝸牛という部分にも障害がおこることがあるので、難聴などの症状が出ると考えられます。他にも脳梗塞や脳出血などが原因になることもあります。
「浮動性めまい」は急性に生じることも、徐々におこることもあります。多くは脳の異常が原因で生じます。ぐるぐる回るのではなく、ふわふわ感じる、まっすぐに歩けない、姿勢を保てないなどの症状が出ます。頭痛を伴う、顔面や手足のしびれ、運動麻痺が生じることもあります。
「立ちくらみ」は言葉どおり、立ち上がりにくらっとしてしまうものですが、紙面が尽きたので以下は来月に。