眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e40

投稿日 2011年4月1日

放射線と眼

院長 廣辻徳彦

3月11日、戦後最大の地震が東日本を襲いました。阪神大震災を経験した私たちにも想像できないような津波の映像を見せられると、心が重くなります。加えて福島でも日本の原子力発電史上最大の被害が引き起こされました。どこまで事実が放送されているのかはわかりませんが、少なくとも世界的にもチェルノブイリに次ぐ(匹敵する?)事故になってしまったのは間違いありません。今回は放射線と眼との関係などについて書いてみます。
ニュースでシーベルト(Sv)やグレイ(Gy)という単位を耳にするようになりました。すでに詳しくご存じの方も多いでしょうが、放射線が物質に照射されたとき、物質が吸収する放射線の量を示す単位をグレイといいます。しかし、生体(人体)への影響は放射線の種類(アルファ線、ガンマ線など)によって異なるので、放射線の種類ごとに定められた値(放射線荷重係数)をグレイ(吸収線量値)に乗じてシーベルト(線量当量)として計算します(計算式では Sv=放射線加重係数×Gy となります)。現在福島原発で問題になっている放射線は主にガンマ線で、加重係数は「1」です。1シーベルトの千分の1が1ミリシーベルト(mSv)、1ミリシーベルトのさらに千分の1が1マイクロシーベルト(μSv)という単位になります。放射線障害についての線量の表を示します。

線量(mSv) 内訳、人体への影響
0.2 東京?ニューヨーク間の航空機での往復1回分
1.0 一般人が1年間にさらされてよい人工放射線(医療での放射線は除く)の限度
2.4 一般人が自然環境下で1年間に受ける放射線の世界平均
6.9-20 X線CTによる1回の撮像(機種や撮影条件で異なる)
10 日本では一般人の屋内退避、ブラジル・カラパリ地区での1年間の自然放射線
100 放射線作業者(妊娠可能な女子以外)が5年間、または緊急時1回で受けてよい放射線
250 福島原発での作業者に限って適応される上限(今回暫定的に決められた)
500 リンパ球の減少、白血病のリスク上昇(1度にまとめて受けた時、以下同じ)
1000 急性放射線障害、気分不良
4000 50%の死亡率(全身に受けた時)、局所的に受ければ脱毛、不妊、白内障など
7000以上 99%の死亡率、頭部や胴体でなく手足のみなら手足の機能障害(熱傷など)

この線量は、1年間とか1回でとか一定期間中にとか限られた時間内で受ける放射線量を意味します。身体にも修復機能があるので、同じ線量であっても1日で浴びるのと1年かけて浴びるのとでは影響にかなりの差があります。報道で「毎時何マイクロシーベルト=μSv/h」という単位をよく聞きます。例えば「原発周囲10Kmのところで50μSv/hが観測されました」というのは、その場所に1日いれば1200μSv、1週間いれば1200×7=8400μSv、1ヶ月いれば8400×4=33600μSv=33.6mSvの線量を浴びることを意味します。50μSv/hという数字とCTスキャンの6900μSv (=6.9mSv)という数字だけを単純に比較するのは的外れで、毎時線量がどれぐらいあるところにどれだけ滞在(居住)するかが問題になるのです。もちろん、一度に浴びるわけでなく、線量も毎日変わるので神経質になりすぎてはいけませんが、子供や妊娠可能な女性は特に気をつけなければなりません。
眼に関しては一度に5000mSv、慢性的に年に150mSvぐらいの被曝をすると白内障がおこるリスクが上昇します。眼の周囲の腫瘍に放射線治療を行う場合に、放射線網膜症という網膜血管や網膜細胞の萎縮がおこることもあります。白内障は手術で治るので問題ありませんが、網膜症は難治です。生命と片眼とを秤にかけると、生命に重きを置くことは仕方がないことかもしれません。
眼の話よりシーベルトのことばかりになってしまいましたが、いずれにせよこれから数年以上この事故とつきあわなければならないのが現実です。情報を正しく理解するようにしましょう