眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e36

投稿日 2010年12月1日

網膜色素変性症について

院長 廣辻徳彦

早いもので今年も12月になってしまいました。今回は網膜色素変性症という病気についてです。網膜色素変性症は、眼の中で光を感じる網膜に異常が生じる遺伝性の病気で、日本では人口10万人に対し18.7人の患者がいると推定されています。
主な症状は夜盲(暗がりでものが見えにくい)、視野狭窄(見える範囲が狭くなる)、視力低下です。網膜には、錐体(すいたい)細胞と杆体(かんたい)細胞という光を感じる2種類の細胞があり、錐体細胞は黄斑(おうはん:網膜の中心部)に集中し、視力や色覚に大事な働きをしています。杆体細胞は黄斑より周辺に多く、周辺の視野や暗い中で光を感じる働きします。この病気では杆体細胞から障害されるため、暗がりで光を感じにくくなる夜盲が最初に現れることが多く、進行すると周辺の視野が狭くなっていき、物にぶつかりやすくなることもあります。さらに進行すると錐体細胞も障害され、視力低下を自覚するようになります。この病気の進行にはかなり個人差がありますが、多くはとてもゆっくりと数十年をかけて進行します。
網膜色素変性症の検査は、眼底検査や視野検査などです。眼底検査は目薬で瞳を開いて(散瞳)、眼底の状態を調べます。「ごま塩状」といわれる色調の変化(図1)、網膜血管が細くなる所見がみられます。骨小体様色素沈着(こつしょうたいようしきそちんちゃく)という変化が眼底の周辺部に現れ、さらには黄斑部にも変性が及びます(図2)。最終的には視神経乳頭も萎縮してしまいます。眼底に色素沈着がみられないタイプもあります。視野検査は見える範囲を調べるもので、初期には視野がリング状に欠ける輪状暗点や部分的な視野欠損が生じます(図3)。進行すると求心性視野狭窄という中心に向かう変化となり、中心の視野だけが残ります(図4)。他に、蛍光眼底検査という造影検査で網膜の萎縮の状態を確かめることもあります。網膜電図という網膜の電気的な信号を調べる検査では、初期から反応が小さくなり、中期以降は反応がみられなくなります。

洗眼

網膜色素変性症は、様々なタイプの遺伝形式をとります。全く形式のわからない孤発例もありますが、遺伝形式を知るためには家系調査が必要になります。今のところ、網膜色素変性には根本的な治療法がありません。進行を遅らせることを期待する様々な内服薬がありますが、確実ではありません。しかしながら、網膜神経保護、遺伝子治療、網膜幹細胞移植、人工網膜などの多くの研究が行われています。病気の進行を遅らせる神経保護は、米国で臨床試験が開始されていますし、京都大学の山中先生のiPS細胞を応用した研究も期待されているところです。現状では、残っている網膜の機能を活用して社会生活を送りやすくするロービジョンケアが重要です。まぶしさを和らげる遮光眼鏡や、ルーペ(拡大鏡)や拡大読書器などが使われます。視野が狭くなると人とぶつかることもあるので、白杖を持てば視覚障害者であることを周りに知らせることができます。
網膜色素変性は矯正視力が0.6以下で視野の障害がある場合、ご本人の申請で医師が難病患者診断書・網膜色素変性臨床調査個人表を記載し、管轄の保健所が基準を満たすと判断すれば医療費の助成を受けることができます。障害の程度によって身体障害者の認定を受けることもできます。詳しくはご相談ください。