眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e30

投稿日 2010年6月1日

メタボリックシンドロームと眼 その2

院長 廣辻徳彦

前回はメタボリックシンドロームについての概略や現時点での定義などを説明しました。内蔵脂肪型肥満に加えて高血圧、高血糖、高脂血症のうちの2つを合わせ持ち、心筋梗塞や脳血管障害など様々な病気を引き起こしやすくなる状態であるというものです。今回は高血圧によって引き起こされることのある眼の病気について書いてみます。
高血圧というと、どなたでもまず「動脈硬化」という言葉を思い浮かべるでしょう。動脈硬化は高血圧や高血糖によって血管(図1)の内部が傷つき、血管の内側にコレステロールなどの沈着物(プラーク)がたまっていくことで内部の壁が厚くなる状態です(図2)。血管内部の壁が厚くなるので、その中を通る血流が少なくなりわずかな血管の収縮でもその血管で栄養される心臓や脳などの組織に影響が出ます。沈着物が増えたりそれが破れて出血したりして血管が詰まる(図3)と心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなりますし、沈着物がはがれてその先の血管を塞ぐこともあります。

メタボリックシンドローム

それでは、高血圧ではどのような眼の状態になるのでしょう。身体の中と同じように、眼の中の血管にも動脈硬化が生じます。通常、動脈硬化が生じても身体の中の血管を見ることはできません。ところが眼の血管だけは角膜と水晶体が透明なので眼底検査をして見ることができます(図4)。同じ人の身体であれば、どこの部分の血管でも大体同じような動脈硬化の程度だと予想されます。ですから、健康診断では身体の血管の代表選手として眼底の動脈硬化の程度を見ているのです。
眼底では、動脈は血圧が上がると収縮して細くなり、口径不同(太さが異なるようになること)を生じます。動脈硬化が起こると静脈との交叉部で静脈を圧迫して交叉現象という静脈のくびれを生じます。これらを観察して程度分類し、実際の血圧の値と比較しながら高血圧のコントロールに役立てています。
眼底での動脈硬化や血圧のコントロールの悪化で、網膜の血管が詰まったり出血を生じたりすることがあります。小さい出血ですむこともあれば眼底全体に広がる出血(中心網膜静脈閉塞症:図5)がおこることもあります。ごく小さな血管の詰まりはわずかな網膜のむくみ(軟性白斑)を生じ、太い動脈が詰まってしまうと急速に視力が低下してしまう病気(中心網膜動脈閉塞症:図6)が生じます。出血や網膜の浮腫(むくみ)の程度が大きく、網膜の中心部に近いほど視力に影響を及ぼし、様々な治療にも関わらず視力が戻らないこともあります。

メタボリックシンドローム

次回は、もう少しこれらの病気についての検査や治療をご紹介します。