眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

(受付)午前8:30〜 午後2:00〜 (休診)土・日・祝祭日・年末年始 ご予約・お問い合わせ0797-72-6586

眼の病気 No.e17

投稿日 2009年5月1日

器械の進化に助けられること

院長 廣辻徳彦

1月から3月にかけて、白内障についての説明をマンスリーに掲載しました。実際に3月11日から当院でも白内障手術を開始し、すでに約20例の手術を行っています。私は今でも母校の医大で非常勤講師を拝命していますが、先日も大学で学生さんに白内障についての講義をしてきました。学生さん相手ではありますが、講義の際には自分なりに知識の整理をして臨んでいます。こういう機会に改めて20年前と現在の白内障手術を比べてみると、手術時間も眼に対する影響もはるかに進歩したということを認識します。今回はせっかく認識を新たにできましたので、そのような進歩について、一部以前と内容が重なってしまいますがご紹介します。
白内障は、眼の中にある水晶体というレンズが濁ることで視力が低下する病気です。手術は「濁った水晶体を取り去る」部分と「替わりのレンズを入れる」部分から成り立ちます。以前は眼を大きく切開して水晶体を取り出していました(下図参照)。当然切開したところは細かく縫合する必要がありましたが、超音波乳化吸引術という方法が器械の進歩で安全にできるようになったことで一変しました。それまで1cmほど切開していたものが6mm程度(眼内レンズの直径分)ですむようになり、次に折たたんで挿入できる眼内レンズが開発されると、4mmから3mm、今では2.5mm以下の切開で手術ができます。手術そのもののやり方(手技)でも無縫合で切開を閉じる手技、水晶体カプセルを円形に切り取る手技、両手を使って手術をする手技などが開発され、安全な手術に役立っています。同じ大きさの切開から手術を行うにしても、昔の器械と今の器械では傷口にかかる負担が違います。弘法筆を選ばずとはいいますが、いくら熟練した料理人でも研いでいない家庭用包丁と手入れされた柳刃で刺身を引けば、明らかな違いが出てくるはずです。もちろん熟練した料理人ならば家庭用包丁でも工夫してしっかりした仕事をするでしょう。私たちも器械が古くても問題のない手術をする自信はあります。しかし、よい器械なら傷口がきれいで眼に優しいよりよい手術ができるのも事実です。

白内障手術

①嚢内摘出術:一番切開が大きい、
縫合が必要
②嚢外摘出術:①よりは小さいが
縫合が必要
③超音波乳化吸引術:約3mm弱の
切開、無縫合

現在一般的に白内障手術といえば99%以上が超音波乳化吸引術で行われています。かなり進行した白内障か特殊な場合にのみ嚢外手術が行われ、嚢内手術はもっとまれです。嚢外手術は超音波手術より大きな切開が必要ですが、眼の状態によっては超音波手術で行うよりはるかにきれいな手術になります(最近の若い先生には経験する機会が少なくなっていますが)。
また、手術を行う際には、顕微鏡を使います。今の顕微鏡は光が明るく性能も良いので、昔の顕微鏡が数十万画素のデジカメだとすれば数百万画素で写真をとっているぐらいの差を感じます。当然手術の細かな操作も安心して行えます。手術の進歩は、医師だけでなく多くの技術者達のおかげと言っても過言ではありません。
患者さんにとっても30分以上かかっていた手術時間が半分以下となり、身体に問題さえなければ通院で手術ができ回復までの時間も短くなっている、となれば器械の進歩の恩恵を受けているといえるでしょう。眼内レンズに健康保険が適用されるようになったのは平成に入ってからです。今のレンズはその頃より各段に進歩していますが、その当時は10万円ほどの自己負担がありました。昔を振り返れるほど偉くなってはいませんが、学生さんへの講義の準備をするたびに世の中は進歩するものだと思います。現在、ストレスのない環境で手術ができることはとても幸せなことと感じています。(次回からは白内障とは違うお話にします)