眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e161

投稿日 2021年10月4日

子供の眼の発生と発達

院長 廣辻徳彦

孫の話をしたついでというわけではありませんが、今回は子供の眼の発生と発達を考えてみます。発生というのは胎内で細胞から組織や臓器が分化し形作られることで、発達は生まれてからの機能の進歩と考えてください。
 妊娠後どのくらいで眼が発生してくるのかといえば、胎生3週ごろです。耳慣れない言葉ですが、神経外胚葉(中枢神経の基となるところ)と表面外胚葉(皮膚などの基となるところ)、中胚葉(血管や筋肉の基となるところ)にある細胞が分化、増殖し、それが合わさって眼球を形作っていきます。胎生3週に神経外胚葉由来の神経溝、神経管というものができて、眼の元となる眼胞ができます(下図:右上の3つの図。神経管が枝分かれして左右の眼胞ができつつあるところです)。胎生4週になると眼胞が眼杯という杯の形に変化し、表面外胚葉では水晶体の基が形作られます(下図:右下の2つの図。くぼんだところから水晶体ができる)。7週までに眼杯が半球状の形になって眼球の後半分を形作ります。このころの眼杯の大きさは約2mm、同じ時期の胎芽(8週ごろまでは胎児ではなく胎芽と言います)が約10mmぐらいなので眼の比率が大きいことがわかります。7週ごろから眼瞼の形成が始まりますが、上下の眼瞼縁は9週ごろから癒着してしまい、分離するのは7ヶ月になってからです。胎生4週ごろには血管も分布しています。胎内では視神経の中央から水晶体の後面に硝子体動脈という血管が存在していますが、8ヶ月ごろまでに痕跡なく消失します。網膜の血管は4ヶ月ごろから視神経を通って網膜に分布し始め周辺に伸びていき、最周辺部に到達するのはちょうど産まれる頃です。
 周産期医療の進歩で、早産で生まれた未熟児も多くは育つようになっています。ただ、網膜の血管は上記のように4ヶ月頃までは無血管でそれから周辺に伸びるので、未熟児では網膜周辺部まで血管が達しないままで産まれてきます。胎内との環境の差によって、伸長途中の網膜血管に異常が生じ、新生血管や増殖膜の発生、出血、網膜剥離という変化が生じるのが未熟児網膜症です。原因として、酸素濃度の関係も強く考えられています。在胎週数が少なく、生下時体重が小さいほど発症確率が高くなります。従来よりも未熟児網膜症の発生頻度は増えています。これは、超未熟児であっても命が助かる確率が増えたことによる影響と解釈もできるので難しいところです。眼科的治療も進歩しているので積極的な治療や手術で一定の視力が維持できることもありますが、小児の失明原因の第1位(約40%)という事実もあります。

さて、新生児の眼はどのようなものなのでしょう。眼の大きさは眼軸長といって前後の長さで表します(上図左の矢印のところ)。近視や遠視などがない(=正視)大人であれば23-4mmですが、新生児の眼軸長は約16.5-17mmです。1歳ごろには急伸長して約21mm、3歳児では22-22.5mmになり、中学生になる頃までに毎年0.1mmくらいずつ大きくなります。これに対して角膜(黒目)の大きさはあまり変わりません。新生児で約10mm余り、大人では11-12mmです。生まれたばかりの子供の眼は黒目がちに見えるので、余計にかわいく見えるのかもしれません。新生児、乳児で角膜の直径が大きくなるのは先天緑内障の大切な所見なので新生児で11mm以上、1歳児で12mm以上あるようなら注意が必要です。視力も生まれてから発達していきます。生下時には網膜の中心部にある錐体という細胞が未発達なので、網膜全体にある桿体という細胞で明暗の反応がわかる程度と考えられています。その後3ヶ月で0.01-2、6ヶ月で0.05くらい、1歳で0.2くらい、2歳で0.5-6に発達し、3歳になると約3分の2が1.0になります。就学時までにほぼ1.0まで見えるようになるのですが、最近は就学前でも親のタブレットやスマホで動画を見続けている子供も少なくありません。小学校に入学するときすでに近視の傾向がある子供さんもいるので、十分に注意して欲しいと思います。