眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e156

投稿日 2021年5月6日

眼科のレーザー治療(その3)

院長 廣辻徳彦

眼科のレーザー治療、①網膜に対するレーザー治療、②緑内障に対するレーザー治療、③角膜、水晶体など屈折矯正に関するレーザー治療の中で、最終回は角膜や水晶体へのレーザー治療です。
角膜に対するレーザー治療で最も有名なのはLASIK(レーシック:LASER (-assisted) in situ keratomileusis
の頭文字)
でしょう。この方法は、マイクロケラトームという精密なカンナ(鉋)のような器械を用いて角膜にフラップを作り、そこにエキシマレーザーという器械を使用して角膜を削るというものです(下図左)。角膜というレンズを削って厚さを薄くし、屈折値を変化させ近視を矯正するというものです。エキシマレーザーを使用する屈折矯正手術にはそれ以前にPRK(photorefractive keratectomy)というものがありましたが、角膜上皮を機械的に剥がしてからレーザーを照射するので術後の痛みなどが強く、今ではほとんどがLASIKに置き換わっています。このPRKとほとんど同じ方法で、近視矯正のためでなく角膜が混濁してしまう病気の治療にエキシマレーザーが使われることがあります。この場合はPTK(phototherapeutic keratectomy:治療的角膜切除術)という名前に変わります。近視の矯正手術のPRKは全て保険診療の適応外ですが、PTKは病気の治療として保険適応が認められています。角膜ジストロフィ(顆粒状角膜ジストロフィ:下図中央、アベリノ角膜ジストロフィ、格子状角膜ジストロフィなど)や帯状角膜変性症(下図右:黒丸の部分)といった疾患が適応疾患になります。LASIKに話を戻しますが、この手術では角膜を削るためにまずフラップを作るという操作が不可欠です。当初は上記のようなマイクロケラトームという使い捨ての鋭利な刃物が使われていました。しかし、包丁で刺身を薄く切る場合を考えていただければわかると思いますが、弾力のあるものを一定の厚さで切るのは簡単ではありません。しかもそれを0.01mm以下の精度で行うとなれば、わずかな誤差が生じることもあります。マイクロケラトームも工業生産物なので、どうしても切れ味にわずかな誤差は生じます。その誤差を排除するために、角膜フラップの切除がイントラレースレーザーという器械で行われるようになり、さらに現在はフェムトセカンドレーザーという器械で行われるようになっています。角膜フラップ作成がより精密になり安全性にも役立っているということです。
LASIKについてはメガネやコンタクトから解放される素晴らしい面がありますが、ドライアイになりやすいとか、グレア、ハローというにじみを感じてしまうというマイナス面も少しあります。40歳を過ぎてくると老眼問題が生じてきます。また、100%保険外診療=自由診療ですので、非常にわずかですが商業的な側面も出てきます。現在マイクロケラトームを使用する方法なら両眼数万円、最新のレーザー機器を使用すれば両眼25-30万円ぐらいでしょうか。分割払いができるところもあるようです。LASIKでは平成17年ごろに器具の消毒を怠って多数の方に視力障害を引き起こした「銀座眼科事件」もありましたが、そういう極端な心配は現在不要と思います。
先にも触れたフェムトセカンドレーザーという発振時間の非常に短いレーザーで、角膜や水晶体に切開を行なって白内障手術をより正確に行う方法があります。決まった名称はないのですが、「プレミアム白内障手術」や「レーザー白内障手術」と呼ばれることもあるようです。コンピューターで制御されたシステムで稼働するので、角膜切開や水晶体嚢の切開が人の手より正確にできるメリットがあります。あらかじめレーザーで濁った水晶体を細かく砕いておいて、手術時の眼球へのダメージが少なくてすむようになっています。多焦点眼内レンズなどを入れる際には、術後の位置ズレが小さくなることも期待できます。実際には熟練した医師が執刀した場合と比べて患者さんが自覚できる差は少ないと思われますが、保険診療外の値段の分だけ満足度は高いかもしれません。
3回にわたって眼科のレーザーのことを書きましたが、このようにいくつか種類と使用法があります。これからも新しい治療法が出てくることが期待されます。