眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

(受付)午前8:30〜 午後2:00〜 (休診)土・日・祝祭日・年末年始 ご予約・お問い合わせ0797-72-6586

眼の病気 No.e15

投稿日 2009年3月1日

白内障 その3

院長 廣辻徳彦

今回がシリーズの最後です。
白内障手術後の視力
手術後にどのくらい視力が出るのかは気になるところです。病気が白内障だけであればかなりの回復が期待できるのですが、ほかの病気(例えば角膜混濁や網膜変性、緑内障などの病気)によって低下している視力の回復までは期待できません。手術前によく説明を聞いてください。
人工レンズ(眼内レンズ)について
手術後は水晶体の代わりになるレンズが必要です。最近ではほとんどの場合に人工レンズが挿入されます。しかしこのレンズは樹脂(アクリルやシリコン)製なので、元の水晶体と同じ働きができるわけではありません。多くの場合微調整(乱視用や老眼用など)のメガネが必要となります。
最近では遠近両用の眼内レンズも開発されています。多くのメリットもあるのですが、保険が適応されていない(片眼で費用が30~45万円程度)こと、近用や中間距離でぼやけることがある、夜間に光がにじむ、乱視や誤差が出た時に追加の矯正手術(別途保険外治療)が必要などの点があり、今のところ日本では0.1%も使われていません。今後の検討が待たれる分野です。
手術の合併症
誰もが(患者さんも医療者も)合併症のない手術を希望します。ところがどのような手術や処置、薬などにも100%という確率は存在しません。
手術中に水晶体を包んでいるカプセルや、チン小帯(カプセルを支えている部分)が弱いことがわかれば、予定の場所に人工レンズが入れられないことがあります(数百に1例)。そのような場合には、別の手術(人工レンズを縫いつける手術や硝子体手術など)を行うこともあります。人工レンズの度数はコンピューターを使って計算しますが、計算と生体とはわずかながら誤差が生じることがあり、まれにレンズの入れ替えが必要になることもあります。ほかにも手術中に出血することもあり、一番重症な駆逐性出血(数千から数万に1例)といわれるものでは重大な視力障害が残ることがあります。また、手術に際しては慎重に消毒を行いますが、熟練者が行った統計でも手術後にバイ菌感染が生じたという報告(約0.05%)があります。眼内でバイ菌が繁殖すると最悪の場合ほとんど見えなくなってしまうことがあるので、状況によっては緊急手術が必要です。
手術後数ヶ月~数年経過してからでも、水晶体のカプセルに残った細胞が増殖し透明だったカプセルがにごることがあります。これを後発白内障といい、視力低下で気がつきます。これはほとんどの場合外来通院でレーザー光線を使えば治療できます。多くの場合これらは手術前にお話しするだけで実際には起こりにくいものですが、合併症0%というのはむつかしいものです。
最後は少し怖い話でしたが、私が医師になった20年以上前から見れば桁違いに安全で確実、しかも身体への負担の少ない手術になったのが白内障手術です。加えて短時間で終了するので「簡単になった」ともよく言われます。しかし、これは器械の改良や手技の進歩なくしては語れない進歩で、「簡単なこと」をしているわけではありません。理事長の理解もあり、当院では現在そろえ得る一番高いレベルの機器を導入できました。この3月から手術を開始しますが、高いレベルの手術を目指して取り組んでいくつもりです。よろしくお願いします。