眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e134

投稿日 2019年7月1日

手術を考える時期

院長 廣辻徳彦

眼科の病気には、そのまま経過観察しているだけで自然に治ってしまうものから、点眼薬、内服薬など薬の力を借りて治すもの、メガネやコンタクトレンズなどの器具を利用するものや、物理的に手術療法を必要とするものまで多くの病気があります。どのような治療を行うかを、選択肢もあればその中でどれが良いかを考えて治療に当たるわけです。治療は医師側だけが提案して決めるのではなく、患者側もその治療に参加していくのが本来の姿なのですが、実際のところは医師側からの提案がメインになることが多いのも事実です。しかしながら、手術についてはそれを行うかどうかについて、患者側の同意がないと絶対に行うことはできません。緊急で行わないとどうしようもない場合から、すぐにしなくても良いけれど手術をする選択肢もあるという場合など、手術の時期にもいろいろあります。今回は「手術を考える時期」について考えてみましょう。
手術をすることには誰でも抵抗があります。何かを治すことが目的で手術をするわけですが、手術が怖いということは当然ですし、手術をすることで起こってしまう合併症というものの可能性も考えなければなりません。昔は、まず切ってみましょう、という外科医がいたのは間違いなく、その手術のおかげで助かった場合もあれば、そのために状態を悪くしてしまったということもありました。そんな勝手な外科医はもうほとんどいないのですが、手術を行う場合はその利点とそのための不利益の可能性を秤にかけて考えなければいけません。
白内障の手術は最も多く行われている手術です。当院でも日帰り手術を行なっていますが、白内障には緊急手術ということがほとんどないので、いつ手術に踏み切るかは患者さん自身で決断する必要があります。私が医師になった30年以上前、指導医の先生は患者さんに「見えなくなるまで待ちましょう」という説明をしていました。手術法も変化し、現在の手術法では進行した白内障ほど手術の難易度(=危険度)が増えるので、「見えなくなるまで待つ」のは患者さん自身のために避けて欲しいところです。手術による合併症で見えなくなってしまうほどの可能性は数万例に一例という確率ですが、その他にも術前よりも見えにくくなるとか、最終的には見えるようになったけれど別の治療が必要になったなど、順調に行かない場合もあります。しかし、その確率は「他のどの手術と比べても安全」なレベルといえる手術です。白内障の手術時期は、両眼ではなく「見えにくい方の眼」だけで見て、「自分のしたいこと(運転や読書、ゴルフなど)に支障が出てきた」時がよい時期であると考えます。
緑内障手術には、急性緑内障発作という急激に眼圧が上がる緑内障に行う手術と、眼圧を下げるための薬を使用しても病気の進行に歯止めがかからない緑内障に行う手術の2種類があります。前者は薬物治療で眼圧が下がらない場合に緊急の手術が必要となり、この場合にはあまり選択肢がないといえるでしょう。後者は進行を抑えるために眼圧を下げる手術を行います。白内障と違い、視力や視野が良くなる手術ではありません。一度ですまない場合もありますし、手術が眼に与えるダメージもあるので薬物治療を差し置いての選択とはならないのですが、病気が極度に進行してしまってからでは遅いということになります。このタイプの緑内障手術の判断は難しいところですが、3-4種類の点眼薬を使用していても視野の悪化に歯止めがかからない場合は考える時期かと思います。
網膜剥離は急に起こってくる病気であり、手術以外の治療法がないので嫌でも手術を考えなければなりません。仕事をしている世代に多いので、仕事に穴を開けてしまうことをみなさん気にされますが、どんな仕事でも自分の眼より大事なものではありません。仕事関係のことの電話連絡もできないような緊急性はありませんので、速やかに病院を受診してどのような手術をするかなどの方針を相談していただくのがよいでしょう。網膜の病気で糖尿病網膜症が進行した増殖糖尿病網膜症は、急に起こる病気ではないのですが、放置すると確実に失明してしまうので手術(同時に糖尿病のコントロール)が必要となります。他に黄斑円孔や黄斑上膜という病気も手術の対象となります。緊急性はないのですが、黄斑円孔は中心視力が低下していることが多く、数ヶ月以上の間手術をしないで放置すると視力回復に影響するので、計画的に時間を作って手術するのがよいと考えます。黄斑上膜は、初期には視力の低下がなく物が歪んで見える症状の病気です。黄斑上膜の手術は、完璧であっても全く元どおりの見え方になるわけではありません。わずかな歪みはあっても視力があまり悪くならないうちに手術を急ぐ必要はないと言えます。視力と自覚症状、黄斑部の状況の変化を勘案して、手術時期を相談するのがよいでしょう。
手術をしたい人はいないと思いますが、どうしても必要な場合もあります。納得がいくまでご相談ください。