桜の季節といろいろな情勢
院長 廣辻徳彦
お正月や雛祭りを楽しんで・・・と思っていたら、あっという間に街が桜色に染まる季節がやってきました。私は誕生日が3月末なので、年度替わりのこの時期に歳を重ねて新しい気分になります。本来なら入学式など新しい出発に向けて楽しい気持ちになるはずのところ、世界情勢の不透明感が影を落としています。
1ヶ月以上続いているイランに対するアメリカとイスラエルの軍事介入は、中東の周辺国にも影響を与えています。中東からの輸入頼りの日本を含むアジア地域では、原油の供給がストップし、生活への影響が出始めています。ロシアによるウクライナ侵攻も4年が経過しました。中東からの原油供給が減少することで、ロシア産の原油への依存度が高まり、ロシアが経済的に潤うことになってしまう逆説的な影響も懸念されています。イランの核兵器開発疑惑は解消されないにせよ、なぜあのタイミングで武力行使を開始せねばならなかったのかは理解に苦しみます。また、イスラエルがなぜこれほどまでに強硬な軍事介入に固執し続けるのかも不思議なところです。イスラエルが四面楚歌とも言える状況下で軍事行動を緩めようとしないのは、紀元前から中世、第二次世界大戦のホロコーストなどで受け続けてきたユダヤ人差別への、単なる報復を超えた感情が背景にあるのかもしれません。彼らは長い間「国を地図から消された」、「国から追われた」経験をさせられています。大戦後に中東の聖地に国家を成立させたとはいえ、周りは他教徒の国ばかりです。今さら振り上げた拳を下ろすという考えもなく、国家の存立をかけた、いわば本能やDNAに刻まれたといえるような感情から、対話を封じ込めて攻撃を続けているのかとも考えます。
3月には修学旅行中の京都の高校生が、沖縄でボートが転覆して死亡する事件が起きました。人を乗せて運ぶ許可の登録もないボートで、波浪注意報の中で海上保安庁から再三勧告を受けながら、漁師でも近づかない危険な浅瀬で起こった事故だったようです。死亡した高校生は、最初に転覆した船でなく、定員いっぱいが乗っていて、救助しても誰も引き上げられないのに同じ場所に向かい転覆したもう一艘のボートに乗船していたそうです。知床で起こった「KAZU Ⅰ」の事故の時に大騒ぎしたマスコミが、今回の事件についてあまり報道しないことには違和感を覚えますが、事故を起こした団体と、まったく安全確認せずに船に乗るコースを設定した学校の責任は追及されるべきと思います。新年度の4月は、明るい話題が増えてほしいですね。
健康とは!(新しい環境でも健康に)
新年度は環境が変化し、同時に人間関係も新たに築かれる時期です。花見や歓迎会など人が集う機会も多くなります。このような席では、えてして飲酒に関する問題が生じやすくなります。以前は、飲酒は円滑な人間関係づくりの一助とされてきました。しかし近年では、アルコールの身体への影響に対する理解が進み、その価値観が変わっています。
アルコールは、適量なら「気分を和らげる」、「寝つきが良くなる」などとされてきました。しかし、気分が和らぐのは、脳の抑制系が働いて不安や緊張が一時的に低下し、「ストレスが解消された」のではなく「感じにくくなっている」のだと解釈されています。飲酒に頼って気分を整えていると、根本的なストレス対処が後回しになることもあります。また、「寝つきが良くなる」と感じることもありますが、アルコールは睡眠の質を低下させ、深い睡眠が減るので疲労回復には良くないとされています。他にも、飲酒は少量でも発がんリスクを高めることが指摘されていますし、アルコールを分解する際に働く酵素(アルデヒド脱水素酵素:ALDH2)の働きが弱く、体質的に合わない人がいることもわかっています。過量の摂取は肝機能障害や高血圧、依存症など、多くの健康リスクを伴うので、絶対に避けるべきです。社会的な問題として、「アルコール・ハラスメント」の認識も高まっています。飲酒の強要は身体的だけでなく、心理的なストレスにもつながるのでしてはいけません。未成年に飲酒を進めるのは、法律的問題だけでなく、成人よりも飲酒リスクが高まるので、厳に慎むべきです。最近では、「飲まないことが最もリスクが低い」と考えられています。ただ、文化的・社会的な側面もあるため、「絶対に飲むべきではない」と断じるよりも、「自分の体質や状況に応じて、主体的に選択する」ことが大事です。
若い世代を中心に、歓迎会そのものへの参加を敬遠する傾向もみられます。昔なら「付き合いが悪い」となるのでしょうが、自分の時間や生活を大切にしたい感覚なのでしょう。過度な人間関係の負担を避け、心の余裕を保とうとする現代的な価値観なのかもしれません。こういった人に参加を強要することがパワハラになることもあります。もちろん、人と交流すること自体は大切です。仕事と離れたところで、無理をせず安心して参加できる場があるのなら、それは好ましいことです。歓迎会の機会だけでなく、自分にとって負担のない範囲で、たまには周囲に合わせつつ新しい環境で健康にお過ごしください。





