赤福よお前もか!
理事長 廣辻逸郎
連日伊勢の名物赤福の日付け偽装事件が新聞テレビを賑わしています。北海道の「白い恋人」の時より私の心を痛めるのは、私の好物であった以上に、本籍地でもある私の伊勢への思いが強いせいでもありましょうか。“伊勢の小正直”と言う言葉がありますが、伊勢の人は小心なくらい正直者だったと思っていたのになんでと言いたくなります。私達世代は物を特に食べ物を粗末にしては罰が当ると教えられそう育って来ました。でも返品された食品を自分が食べるのはいいでしょうが再加工して出荷しては犯罪です。内宮さんを参拝し、赤福本舗で襷がけの若い女性が指を揃えて餡を包んだ出来たての赤福を頬張る楽しみを無くしてしまった経営者は何と馬鹿なことをしたのでしょう。不二家のミルキーは再出発出来るでしょうが、赤福は再起不能になりましょう。腹立たしいが悲しい限りです。
地元だけでなく、百貨店・駅・空港売店まで赤福を積み上げて随分儲けていたでしょうに、こんなつまらぬ犯罪行為をした社長に比べ、私は倉敷紡績大原孫三郎氏に思いを馳せます。
言うまでもなく倉敷の大原美術館の設立者ですが、その功績以上に私が氏を偉大な人物と思うのは、倉敷中央病院や労働科学研究所の設立者であることです。
明治から大正にかけ日本の大成長の基になった紡績事業は、一面女工哀史の歴史でもありました。当時日本の社会の貧困さは、現在生活している我々には想像を絶するものでした。しかも労働運動は官憲の厳しい監視下に置かれて、労働運動で逮捕された人は厳しい拷問を受けました。そんな時代に女工の生活改善・結核予防治療に目を向けて、倉敷に病院を建設し、また労働科学研究所を設立されたのです。この病院で医長をされた医師が大学教授になられるくらい内容のある病院です。他に大阪の愛染橋病院も母子医療保健を含む低所得者病院として早くから設立されました。社会面だけでなく文化的にも民芸運動の理解者でもありました。
金を儲けてなんで悪いと嘯く現代人に比べて、大正昭和の初めの、貧困と人権無視の時代に、労働者の生活環境改善に資金を提供し、一方美術品の収集や日本の民芸運動の理解者として貢献された偉大な人物に改めて敬意を表します。
現代にもこんな大人物が存在していましょうか。
健康とは! ホントかな?たばこ有害論
今更医者が(眼科医ですがれっきとした医師です)煙草の有害無害をと思われるかもしれません。でも頭からたばこは有害と決め付けることも間違いです。私はたばこをやめて40年以上になりますが、たばこの美味しさ、特に食事の後や、一仕事終わった後の一服の美味しさは格別なこともよく知っております。でも高血圧の患者さんに「ニコチンは血管を異常に収縮させますよ」と言って有害論を述べます。有益ではありません。吸わないに越したことはありません。
たばこを吸うから肺癌になる。副流煙はなお危険だ。だから止めなさいは医学的なようで実際はそうでもなさそうです。肺癌の増えたのは長生きするようになったからと言う説もあります。大体学者の言うことは必ずしも真実ではありません。結核が減ったのはストマイやパスのせいでなく、栄養が良くなったからといわれますし、眼科でトラコーマが無くなったのはテラマイシンのお蔭でなく、生活環境の改善です。これは私が宝塚市でも実感しております。
現在日本は長寿国世界一。百歳超が3万人を越しました。0.025% 1万人に2.5人が百歳の長寿です。どうしてこんなに長寿になったのでしょう。栄養・医療・健康保険のせいでしょうか。或いはたばこ人口が減ったせいでしょうか。
誰も解かりません。ただ頭から有害を前提にたばこの健康問題を論じることの怖さも一考を要すると言いたいのです。
映画や芝居で俳優がたばこをくゆらすシーンがなくなりました。文化的には淋しい限りです。
今年の文春10月号に解剖学者養老孟司氏と劇作家山崎正和氏が「変な国日本の禁煙原理主義」と題して対談されています。色々示唆に富んだ話をされています。
「メガネ」と「コンタクトレンズ」のかしこい使い方
メガネもコンタクトレンズ(以後CL)も視力矯正になくてはならないものです。中学生以降の日本人の60%以上に近視或いは乱視がありますし、45歳を越えますと老眼が出てきます。老眼は加齢現象で誰にでも起こってくる現象です。ただその方の屈折状態でメガネの度数が変わります。最近日常生活でITの使用も増えていますから、余計にメガネとCLの使い方に注意が必要です。
A こどもとメガネ
宝塚市では3歳児検診で屈折検査を施行しています。幼児で強い遠視を早期に発見するためです。
小学1~2年生頃で略眼球の成長が終わりますが、それまでは軽度の遠視で正常です。しかし遠視が強いと弱視になる危険があります。弱視の予防にはメガネが絶対必要です。斜視の予防治療にもなります。メガネを掛けて可哀想でなく、眼科医の指導を受けてください。
低学年の近視のメガネは、仮性近視は当然メガネでなく治療が必要ですが、真性近視になっているのに何時までも治療することは無意味ですし、かえってよくありません。低学年では0.7ではまだよろしいが、高学年や中学生で0.7を切っては授業に差し障ります。メガネで気持ちよく授業を受けましょう。メガネを掛けるから近視が進むのではありません。
こどものCLの使用は中学生からと指導しています。中学生になればCLの管理が出来ましょう。
ただサッカーやバレーダンスをする小学生に母親の管理を条件に使い捨てCLの処方をしております。
B 多焦点メガネ
遠・中・近どの距離にも焦点が合うメガネです。最近のレンズは設計がよくなって、レンズの歪みも少なく、レンズ直経の短い最近のフレームにも使用できます。老眼が起こってきた早期からこのレンズに馴れると、PC使用の多いビジネスマン・OLも快適に生活できます。ただ女性はメガネを装用することを嫌われますが、頭痛・肩こり・眼精疲労等を更年期症状として対応されている方が、メガネの使用で諸症状が軽快することを経験します。
C CL使用上の注意
CLも最近は殆ど使い捨てソフトレンズになりました。一番注意しなければならないことは、感染による角膜障害です。
使用期限を守らない、はめっぱなして寝る。消毒をしない等不適切な使用による眼の障害を軽んじてはなりません。レンズ自体の消毒だけでなく、レンズケースの汚染も要注意です。今年のCL学会で、某医大の学生33人中19例%(57.6%)のレンズケースが微生物汚染されていたという報告がありました。微生物は細菌だけでなくアメーバ-やカビがあって、角膜感染するととても危険で失明の恐れもあります。レンズの洗浄・消毒と、ケースは度々新しいのに取り替えましょう。
CL使用時は、乾燥による障害も起こりやすいです。乾燥予防の点眼薬の使用を勧めます。
D 老眼用CL
ハード・ソフト両CLにも老眼用が開発されています。メガネのように快適に使用されているとは言えませんが、うまく使っておられる方もあります。実際に試用した上で購入を決められたらいいでしょう。老眼が出てきてから老眼用CLを始められことには余り賛成しません。