眼と食事―サプリメントについて その2
院長 廣辻徳彦
前回から、眼とサプリメントについてご紹介しています。おさらいになりますが、サプリメントの日本での定義は、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、一般食品などに分類される健康食品のなかで、一定量のビタミンやミネラルが含まれるというものです。病気を治療するものではなく予防や進行を遅らせられるかもしれないという程度の位置づけなので、過剰な表示には注意が必要です。
加齢性黄斑変性症について、前回いろいろなサプリメントを紹介しました。これらのサプリメントはどのような食品に含まれているのでしょう。カロテノイド色素(カロテン類:βカロテン(=カロチン)、リコペン(=リコピン))やキサントフィル類(ルテイン、ゼアキサンチン)はいわゆる緑黄色野菜によく含まれます。具体的には青汁の元になるケールやほうれん草、パセリ、高菜、セロリなどに多いとされています。リコペンがトマトに含まれているのをご存知の方も多いはずです。DHA(ドコヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)がサバ、イワシ、サンマなどの青魚に多いのも有名ですね。ビタミンAはレバー、緑黄色野菜に、B群はレバー、豚、魚に、Cは果物に、Eは緑黄色野菜、豆類、植物油などに含まれています。亜鉛は貝類、根菜類に多く含まれます。加齢性黄斑変性症は、欧米では後天性の失明原因の第1位となっている病気です。近年日本でも増加傾向にあり、失明原因の第4位になっています。これまでの日本人は魚や野菜を多く摂る食習慣でしたが、肉を摂る機会が増えた結果、病気の割合が増加したとも考えられています。
加齢性黄斑変性症以外では、どのような病気にサプリメントが有効と言われているのでしょう。例えば、白内障の原因にビタミンCの欠乏や酸化作用があると言われています。ですから、サプリメントとしてはビタミンCやE、カルテノイド色素の摂取が有効とされています。ただし、白内障は加齢に伴う変化ですので、どのようなサプリメントを摂取しても進行を止めるとか改善するとかまでの効能は期待できません。
眼とサプリメントの関係を考えるとき、「ブルーベリー」が思い浮かぶ方は多いと思います。「ビルベリー」というブルーベリーの近縁種の名前もよく耳にします。コマーシャルの影響が大きいのでしょうが、ブルーベリーは本当に「眼に良い」のでしょうか。ブルーベリーやビルベリーには、網膜に良く視力改善効果が宣伝されている「アントシアニン」が豊富に含まれています。ブルーベリーなどを使用した健康食品は数多く市販されていますが、独立行政法人「国立健康・栄養研究所 http://hfnet.nih.go.jp/」の論文調査では、アントシアニンによる視力改善効果は認められていません。欧米ではアントシアニンを含む医薬品も販売されています(欧米では代替医療が認められているため)が、日本国内では医薬品として認可されたものはありません。アントシアニンは、網膜で光を感受するときに使われるロドプシンという物質の再合成に使用される事から、眼に良いという宣伝がされています。しかしながらロドプシンは杆体細胞というところに多く含まれる物質で、もし効果があるとしても視力向上には働かず、暗がりで少し見やすくなるというのが理屈です(国立健康・栄養研究所の調査では、夜間の視力改善を明らかにした論文もないようです)。ただ、ブルーベリーにはポリフェノールが豊富に入っているため、抗酸化力が強いといわれています。酸化作用は人体の様々なところに悪影響を与えるとされていますので、視力改善よりはそれによる効果がある可能性はあります。
サプリメントに限らず、本当に有効かどうかを判定するのは難しい作業です。たくさんの人を対象に、一定期間その物質を与えるグループと与えないグループにわけ、調査する方もされる方もどちらを飲んでいるかわからない状態で、最終的に効果を客観的に判断する二重盲検法で判断しないといけません。その研究がいくつか集まって同じ結果であれば初めて有効と認められます。ルテインなどはそういう調査がされ、加齢性黄斑変性症予防に有効と思われる結果があり、アントシアニンは視力改善について結果が出されていないということです。ただ、心理的効果が身体によい影響を与えることも事実です。信じて服用する分には何も悪いことはありません。サプリメントは結構値段が高いものが多いので、いろいろな情報を考えてご使用ください。 最後に大事なことですが、サプリメントを考える前にはまずバランスのとれた食事を心がけてください。不摂生をサプリメントで補うというのは根本的に間違いです。また、タバコを吸う方はまずそれをやめましょう。1本のタバコでも、サプリメントを含むすべての健康法を台無しにし、周囲の人にまで害を及ぼします。