まぶたが腫れて痛い・・・
院長 廣辻徳彦
まぶたが腫れて痛くなってしまうことがあります。俗に「ものもらい」とも言われていますが、関西では「めばちこ」の方が聞き慣れているかもしれません。「麦粒種(ばくりゅうしゅ)」
とか「霰粒種(さんりゅうしゅ)」というのが正式な名前です。上下どちらのまぶたにもできますが、今回はこれらについて書いてみます。
「麦粒種」の原因は細菌感染です。下図(日本眼科学会spanより引用)はまぶたの断面図です。まぶたには睫毛(=まつげ)が生えていますが、まつげの周囲の皮膚には汗を出す分泌腺である汗腺があります。麦粒種はこの汗腺や睫毛の毛根、涙液中の油の成分を分泌するマイボーム腺というところに細菌が感染した場合に生じます。感染や毛根に感染した場合を外麦粒腫、マイボーム腺に感染した場合を内麦粒腫と呼びます。麦粒腫になると、初めはまぶたの一部に赤みが出現し、軽度の痛みや痒みを伴います。そのまま治ることもありますが、炎症が強くなると赤みや腫れ、痛みが強くなり、膿がたまってきます。外麦粒種では皮膚側に化膿した白い膿が見え、内麦粒種ではまぶたの裏側に膿がたまります。
治療には抗生物質や消炎剤の点眼や内服を行います。あまりに化膿している場合は、そこを切開して膿を出してやれば快方に向かいます。化膿したところが自然に破れて膿が出ることがありますが、膿さえ出てしまえば切開した場合と同じく治っていきます。
「霰粒腫」は、麦粒種のところでも出てきたマイボーム腺(下図参照)というところに生じます。マイボーム腺の出口がつまってしまい、慢性的(ゆっくりとおこるという意味)な炎症が起きてかたまりができてしまうものです。このかたまりを肉芽腫(にくげしゅ)といい、基本的には細菌感染を伴わない炎症です。霰粒腫になると、まぶたに腫れや異物感を感じます。本来は細菌の感染がないので強い痛みや赤みもなく、コロコロとしたできもの(腫瘤)を触れる感じがします。しかし、できもののところに細菌が感染することも少なからずあり、この場合は赤みや腫れも強くなります。これを急性霰粒腫と呼びます。
麦粒種や霰粒種になると気になるので眼をこすりがちですが、腫れが強くなるのでできるだけ触らないようにしましょう。また、結膜炎と違い人に感染(人から感染)するものではありません。眼帯は腫れを隠す役には立ちますが、治療効果はありません。眼帯のためにかえって不潔になることもあるので、無理に眼帯をすることはありません。
霰粒腫の治療はできものが小さければ自然に吸収されることもあるので、経過観察だけでよいこともあります。しかし、大きい場合は手術で摘出したり副腎皮質ステロイド薬を注射したりすることもあります。急性霰粒腫の場合は抗生物質などで炎症を抑えて、できものが残る場合に切開などを考えます。小さい子どもさんの場合には手術時に局所麻酔ではできないので、大げさですが全身麻酔がいることもあります。数は少ないですが、高齢者では悪性腫瘍(脂腺ガンなど)との鑑別が必要であることもあるので注意がいります。
麦粒種や霰粒種になると気になるので眼をこすりがちですが、腫れが強くなるのでできるだけ触らないようにしましょう。また、結膜炎と違い人に感染(人から感染)するものではありません。眼帯は腫れを隠す役には立ちますが、治療効果はありません。眼帯のためにかえって不潔になることもあるので、無理に眼帯をすることはありません。
図:まぶたの断面(日本眼科学会ホームページより)
瞼板はまぶたの軟骨のようなもので、その中にマイボーム腺という分泌腺がある。