レーシック(LASIK)について
院長 廣辻徳彦
今年に入って「東京の某眼科で手術されたレーシックで角膜に感染が生じた」というニュースがありました。最近はそれに対する集団訴訟についても報道されました。先月まで近視などについてお話してきましたが、それに関連する話題としてレーシックについてのことを書いてみます。レーシックとは近視などを矯正する手術なのですが、いったいどのような手術なのでしょう。
近視などを矯正するにはメガネやコンタクトレンズが一般的で、これらの手段は有用であることは言うまでもありません。しかし、メガネは「見た目が悪い」、「耳や鼻が痛くなる」、コンタクトレンズは「はめはずし、保管に手間がかかる」、「角膜障害が出ることがある」など敬遠される部分があるのも否めません。メガネをかけず、しかもコンタクトを使わずに近視を矯正したい」というのは、おそらく近視がある人すべての思いといってもいいでしょう。その流れの中で、眼球の中で一番表面にあり、手をつけやすい「角膜」に対する手術をし、近視を矯正しようということが考えられたのです。角膜というのは凸レンズの形をしていますので、その一部に切れ目を入れたり削ったりする手術によってそのレンスの度数を変えれば、メガネやコンタクトレンズなしでよく目が見えるという理屈です。
最初は、角膜にいくつか切れ目を入れてその形を変える方法が行われました。放射状角膜切開(RK)という方法です。ソ連(今のロシア)やアメリカではかなり盛んに行われましたが、精度に問題があり現在はほとんど行われていません。その後、角膜をエキシマレーザーという器械で削り、近視を矯正する方法が出てきました。PRKと呼ばれる方法です。コンピューターで管理されたエキシマレーザーで治療ができるため、かなり正確に度数の調整ができます。しかし、PRKでは角膜の広い範囲に傷ができるため、手術後に傷が治るまで安定した視力が得られませんでした。そこで、角膜を薄くそぎ切りにして(フラップ作成)角膜の内部だけをレーザーで削り、その部分を元に戻すというレーシックという方法が考え出されました(下図参照)。手術自体10分程度で終了し、手術後の痛みもなく安定した視力が得やすく、現在は近視矯正手術の主流となっています。
※(日本眼科学会ホームページより引用)
長所
・90%以上で裸眼視力1.0程度になる
・メガネやコンタクトが不要になる
・外来通院で可能
・手術後の痛みがほとんどない
・手術後早期(数時間~1日)で視力が回復
短所
・健康保険がきかない(自費;片眼10~20万円)
・追加の矯正が必要なこともある
・円錐角膜や緑内障など適応外の病気がある
・術後に近視や乱視が進行することもある
・老眼の矯正はできない
一般的に近視や乱視は20歳以降にはあまり進行しません。逆に言えば若いうちにはレーシックの後にも変化することがあるので、眼の度数が安定している状態で手術を受けるべきとされています。術後には角膜の厚さが薄くなるので。眼圧が正確に測れなくなります。40歳以降になると緑内障が発症する可能性(20人に1人)がありますが、発見が遅れてしまう怖れもあります。レーシックはメガネやコンタクトから解放される良い手術ですが、自由診療であるがゆえの過大な宣伝(値段の安さ、いい加減な適応での施術)に惑わさず、じっくり考えてみるのが良いでしょう。(ちなみにレーシックを受けている眼科医も多いのですが、自分はしないという眼科医はそれ以上です。)