眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e195

投稿日 2024年8月1日

結膜の病気いろいろ(その2)

院長 廣辻徳彦

結膜との病気について昨年9月に書いて、もう少し追加するつもりで放置していましたが、今回は(その2)です。結膜は眼球の外側を構成している透明な角膜と白色の強膜のうち、強膜の前方部分の表面(=球結膜)と、上下のまぶた(眼瞼)の裏側を覆っている(=瞼結膜)薄い膜です。球結膜と瞼結膜の間の曲がっているところ(天井と床に当たるところ)を円蓋部結膜といいます(下図の上下の赤い線のところ :参天製薬HP)。前回写真を載せていなかった翼状片の写真(下図1:手術前、下図2:手術後)を下に示します。

結膜弛緩症というのは、その名の通り結膜が弛緩(=ゆるむ)した状態になる病気です。結膜にはいろいろな方向に眼球を動かす際、ある程度伸び縮みができるような適度なゆるみがあります。このゆるみが通常よりも強くなってしまった状態が結膜弛緩症です。ゆるんだ結膜は重力のせいで下まぶたに沿って存在し、程度が強いと下眼瞼(まぶた)にかぶさって角膜に引っかかるようになります。涙に染色液で色をつけてブルーライトを当てるとわかりやすくなります(上図3:上が結膜弛緩症、下が染色してブルーライトを当てたところで白矢印が弛緩した結膜)。原因はよくわかっていませんが、加齢によって結膜と強膜の結合がゆるくなることが挙げられます。弛緩した結膜は涙の流れを悪くし、角膜のうるおい具合に影響します。弛緩した結膜がひだやしわを形成し、そのひだの間に涙がたまって外にこぼれ落ちるため、「涙が出る」などの流涙症状が出てきます。また、眼球運動や瞬きにともなって弛緩した結膜が過剰に動くため、不快感に近いような異物感を生じます。弛緩した結膜は眼球運動や瞬きで動きやすくなり、その結果結膜の毛細血管に力が加わり、結膜下出血の原因になることがあります。流涙などの症状を改善するため、結膜弛緩症の治療には緩んでいる分の結膜を切り取って縫合したり、熱凝固の作用で結膜を収縮させたりして「しわを取る」手術を行うこともあります(下図4:手術前でしわのところに涙が貯まっています。下図5:手術後ではしわが取れて涙の層がきれいになっています。)。
上輪部角結膜炎(superior limbic keratoconjunctivitis:SLK)という病気はドライアイとの関連が深いのですが、結膜に所見が出るので紹介します。角膜上方の球結膜と輪部(角膜の最周辺部)に炎症を起こす疾患で、30〜60歳くらいの女性に多く、左右差があるものの両眼性に起こります。涙のバランスが悪いと、上眼瞼の結膜と眼表面がまばたきで擦れ合う時に摩擦が強くなりキズができると考えられています(図6:結膜がやや充血している、7:黄緑のところがキズ)。上まぶたの不快感やごろつき感、目が開けにくいという症状も出ます。コンタクトレンズが原因になることもあり、甲状腺の疾患と関連があるという報告もあります。治療にはドライアイ用、抗炎症用、抗アレルギー用の点眼薬を使います。涙の量を増やすため「涙点プラグ」で涙の排水口にフタをする治療や、上方の結膜弛緩が関係しているという知見から手術治療も有効とされています。結膜には他にも癌などの腫瘍といった病気がありますが、別の機会があれば紹介します。