眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e122

投稿日 2018年7月2日

眼科健診

院長 廣辻徳彦

「猫も杓子もワールドカップ」。開幕前は監督の交代やら調整試合での敗戦やら、悲観的な意見も多かったところ、初戦は格上に勝利し2戦目引き分けと日本中が盛り上がる展開となりました。第3戦は少し納得いかなかったとはいえ、ルールの中で勝ち残るのが大事です。決勝トーナメントでは一発勝負、しっかり備えて力一杯の試合をしてほしいものです。備えといえば、「健診」や「検診」というのは、血圧や血液の値の異常を調べたり、病気の早期発見や治療を目的として検査を受けたりする病気に対する備えです。同じ読み方ですが、健診とは「健康診断」の略で、健康かどうか調べ病気の危険因子を早く見つけるために検査や診断を受けるもので、「検診」とは「がん検診」や「「歯科検診」のように特定の病気や臓器の検査をして異常を早期に発見するためのものです。今回は「健診」という言葉で統一して書いていきます。
一般に広く行われているのは「特定健診、特定保健指導」と呼ばれるもので、主にメタボリックシンドロームに主眼を置いています。内科での血圧値や血糖値などの結果で、眼底検査を指導されることも多いかと思います。健診は異常を見つけるためのものなので、健診の目的で健康保険の利用はできません。公費、あるいは自費での検査が健康保険上のルールですのでご記憶ください。さて、眼科で大事な健診には、小児期に行われる「3歳児健診」と壮年期以降に行う緑内障や眼底の健診があります。
「3歳児健診」は子供の視力が発育していくかどうかを確認するための健診です。ヒトの視力は概ね7−8歳ぐらいまでに発達します。遠視や乱視という屈折異常の値が大きかったり、左右の屈折値(近視や遠視、乱視など)が違ったりすると、十分な視力が発育しなくなります(=弱視)。乳児期に検査をするのは物理的に難しく、検査のしやすい小学校の入学以降では治療の開始に少しばかり遅いところです(全くダメなわけではありません)。多くの研究で、3−4歳に治療を始めればほとんどが大丈夫だとされているので、厚労省の指導で自治体(市町村)が主体となって3歳児(3歳以上4歳未満の間)に屈折異常の検査をするのが「3歳児健診」というわけです。この地域では3歳半の頃に検査(1次:家庭での視力検査やアンケート、2次:保健センターなどでの健診)を行なって、必要に応じて眼科で精密検査を受けることになっています。
壮年期以降では、高血圧や糖尿病での変化を検査する眼底検査、40歳以上の20人に1人に発症するといわれている緑内障検査が大事な健診になります。前述したように、特定健診(メタボ健診)は高血圧や糖尿病に関する健診です。これらの病気は動脈硬化や血管の異常を引き起こし、脳、心臓、腎臓、神経組織など身体の大事な臓器や眼底の病気の原因となります。最近の統計で、日本人の死因はガン、心疾患、脳血管疾患、肺炎の順で、特に心疾患と脳血管疾患には高血圧や糖尿病との因果関係が高いので放置できないところです。眼底は、身体の中で動脈や静脈などの血管を直接観察できる唯一の場所です。眼底出血から糖尿病を発見することもあるぐらいなので、壮年期以降にはして欲しい健診の一つです。緑内障は「眼圧が高い病気」と思われがちですが、7−8割は正常な眼圧で発症します。これまで何回も緑内障の紹介をしてきましたが、緑内障はざっくり言えば「視神経に異常を生じる疾患で、眼圧を下げる治療が必要な病気」です。眼圧の検査で見つかることは実際には少なく、眼底検査で視神経の異常を見つけて、その後検査を行って診断がつくことがほとんどです。早期の発見が重要ですので、緑内障健診の意味は大きいと言えます。下に正常と病気の眼底を示します。病気については過去の記事をご参照下さい。


健診の必要性にはいろいろな意見もあり、「がん検診」には意味がないと極端なことをいう医師(「がんもどき」という突拍子もない非科学的理論を公言している先生)もいます。私たちにもいつかは寿命が来ますし、いつまでも健康ではいられませんが、いろいろな病気を早期に見つけて生活の質を保つことを目的とした健診には十分意味があると考えられます。適切な時期に、適切な健診をされることをお勧めします。