眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e214

投稿日 2026年3月2日

新しい緑内障点眼薬

院長 廣辻徳彦

緑内障は視神経が障害されて視野欠損が進行し、適切に治療されなければ失明に至る疾患で、我が国の視覚障害(視力低下や失明)の原因の第一位となっている病気です。2013年の推定患者数(世界)は6,430万人で、2040年には1億1180万人に増加するという予測もあります。日本における疫学調査では、40歳以上の日本人における緑内障の有病率は5.0%(原発開放隅角緑内障3.9%、原発閉塞隅角緑内障 0.6%、続発緑内障 0.5%)、高眼圧症は0.8%でした。緑内障の有病率は、年齢とともに高くなることが知られていて、人口の高齢化に伴って患者の数はさらに増加することが予想されるため、早期発見・早期治療がますます重要と考えられています。(今回は参天製薬のHPも引用しています。)
現在証明されている緑内障の治療は、眼圧(眼の硬さ)を下げることだけです。ですから、点眼薬や手術などを用いて、症状が進行しない眼圧にコントロールすることが重要視されています。以前にもご紹介はしましたが、眼の中には房水という水が流れており、その房水の流れが眼圧に影響を与えます。

房水は毛様体というところで産生されますが、眼の中の組織に栄養を与える役割を果たしています。その後眼外へ排出されますが、房水の排出経路には2通り(下図参照)あり、シュレム菅という場所を通る「線維柱帯流出路(主経路)」と、虹彩や毛様体と強膜(白眼の部分)のすきまを通る「ぶどう膜強膜流出路(副経路)」から排出されるとされています。この流れの中で、房水の産生を抑制するか、排出を促進するかをコントロールして、眼圧を下げようとするのが緑内障の点眼薬です。
いろいろな点眼薬がありますが、第一選択薬として使われることが多いFP受容体作動薬(ラタノプロストやトラボプロストなど:先発品キサラタン、トラバタンズ、タプロス、ルミガン)や、α2作動薬(ブリモニジン:アイファガン)、EP2作動薬(オミデネパグ イソプロピル:エイベリス)はぶどう膜強膜流出路(副経路)からの排出を促進させる点眼薬です。ROCK阻害薬(リパスジル:グラナテック)は線維柱帯流出路(主経路)からの排出を促進させる点眼薬です。また、β遮断薬(チモロール、カルテオロール:チモプトール、ミケラン)や炭酸脱水酵素阻害薬(ドルゾラミド、ブリンドラミド:トルソプト、エイゾプト)は、房水の産生を抑制して眼圧を下げるのに役立ちます。緑内障の治療は、これらの点眼薬をできれるだけ少ない種類で組み合わせて、症状が進行しないような眼圧にコントロールするものだとも言えます。ただ、点眼薬の副作用が強い場合や、何種類かを使用しても進行が止まらない場合には、手術的に眼圧を下げることも必要になります。
今回参天製薬から発売されたセペタプラスト(セタネオ)点眼薬(上図参照)は、先に紹介したFP受容体作動薬の一種です。FP受容体のほかに、もう一つEP3受容体というところに作用するという働きを持ち、線維柱帯流出路(主経路)からの房水流出にも作用する薬です。緑内障の治療では、単剤療法が不十分な場合に、配合点眼薬を含む多剤併用を行うことになるのですが、複数薬剤の点眼による副作用の増加や、点眼回数の増加に伴う患者さんの負担には留意する必要があります。これらのことから、新たな作用機序で強力な眼圧下降作用を有する眼圧下降薬が登場したとなれば、患者さんにとっても新たな治療選択肢ができたと考えられます。実際の臨床治験では、ラタノプロスト点眼に対して眼圧下降効果の非劣性(少なくとも負けていませんよという結果)が検証されました。ただ、1日を通して眼圧下降の結果をみた場合、眼圧下降の持続時間が従来の点眼よりも長くなったという結果も出ているので、外来で眼圧を計測する日中(朝や午後の診察時間)だけでなく、夜間も低眼圧が保たれることで病気の進行を抑制するという期待が持てるところに強みがあるとされています。FP受容体作動薬の効果を持つので、睫毛や眼瞼周囲のうぶ毛が太く長くなる、充血しやすい、虹彩色素沈着、上眼瞼溝深化(眼のくぼみが深くなる状態)などの副作用があるのは変わりません。これらの副作用は、1滴だけで十分な点眼量であるのに、つい何滴も入れてしまう場合起こりやすいと考えられます。点眼薬は1滴でも閉瞼するとあふれてしまう量なので、点眼の際には入れすぎない注意が必要です。このセタネオ点眼薬は、あふれすぎないようにかつ効果が出るように点眼量が調整されているらしいので、それによる副作用が少しは軽減するかもしれません。また、市販後1年までは健康保険の関係で本数制限があり、両眼に使用する場合兵庫県では2本までの処方に限られます。緑内障の経過が問題ない方に新たに処方するわけではありませんが、必要に応じて当院でも使用しています。