新年の始まり−癸卯
院長 廣辻徳彦
新年あけましておめでとうございます。単純に時間軸を考えれば同じ毎日の繰り返しで23時59分が0時0分に変わるだけとはいうものの、神社に出かければ0時を回ったところで照明が明るくなり、スピーカーから定番の「春の海」が流れてきて新年を迎えたことを実感します。毎年参拝している宝塚神社では、1日の午後3時を過ぎていたにも関わらず参道に長い列ができていて、お参りをするだけでも一仕事でした。しっかり1年の健康と世界の平和をお祈りし、今年も元気で頑張りたいと思うのでした。
さて、12月に所用があって高知まで出かけてきました。子供が高知の大学に通っていた頃には数回訪れていましたが、数年ぶりの訪問でした。高知は食べ物も美味しく、室戸岬から足摺岬まで東西も長く魅力的な県です。今回は、これまで行きたいと思いつつ一度も訪れていなかった「高知県立牧野植物園」に行ってきました。牧野植物園は、植物学者の牧野富太郎博士が高知県出身であることから、その業績を顕彰するために設立された植物園です。牧野博士は小学校を中退したにも関わらず、その後は興味を持った植物学の研鑽を独学で重ね、東京帝国大学理科大学の助手と講師を長年務め、東京大学理学博士号を取得されて日本の植物学の父とも言われています。研究の集大成である「牧野日本植物図鑑」が昭和15年に出版されましたが、この図鑑は現在も改訂を重ねて出版が続けられています(我が家にも昭和50年ごろの版があります)。通常植物園では園内の植物に名前や特徴を描いた立て札や下げ札がついていますが、ここの植物園ではこれまで見てきたどこの植物園よりも数多くの立て札がついていて、すべての木や草についているのではないかと思うくらい丁寧に展示されています。園内は広く、全施設を巡るのに1、2時間では足りませんが、見応えのある展示内容です。牧野博士が今年の4月からはじまるNHKの連続テレビ小説の主人公のモデルになったことで来場者が増えることが予想されるためか、現在駐車場を含めて一部改修工事中ですが、もし高知に行かれるチャンスがあれば訪れてみてはいかがかと思います。
今年も12ヶ月が始まります。これからと思うと長く感じますが、振り返ればあっという間に過ぎてしまう時間です。世間の情勢は良いことばかりではありませんが、海外旅行もできるかもしれませんし、何かにチャレンジすれば新しい発見があるかもしれません。ピョンと飛躍の良い1年を過ごしたいものです。
健康とは!
マンスリーを読まれている方のほとんどはご存知でしょうが、お正月の「おせち」には健康や幸運を祈っての料理が入っています。昨年9月の重陽の節供の時期に「節供」ということについて記事を書いたのですが、「おせち」の由来を調べてみると、そのような節日に神様に供えられる料理(神饌)のことを御節供(御節句)とも呼んでいたそうで、また、古くは天皇が元日の朝に文武百官の拝賀を受ける「朝賀」という行事の後に料理を振る舞う「元日節会」という習慣もあり、節日のお料理の中で一年の区切りとなるお正月(人日)の料理を特に「おせち」と呼ぶようになったということです。
おせちにはそれぞれに縁起ものとしての意味がありますし、子孫繁栄や五穀豊穣、無病息災を祈る気持ちが込められています。基本は「祝い肴三種」と言われる黒豆、数の子、たたきごぼう(関東ではごまめ:田作り)だそうですが、子孫繁栄には数の子、昆布(子生、よろこぶ)、八頭など、五穀豊穣には田作り(片口鰯は小さくても尾頭付であり、これを肥料にして田畑が大豊作になるという話から)など、健康には黒豆(日焼けしてマメに働く)など、金運にはきんとん、魔除け・厄除けに紅白かまぼこ、海老(赤が魔除けの色、長寿の意味、脱皮することから生命の継続や出世の意もあるそうです)など、いろいろな意味のこもった定番のお料理も入っています。
ただ、現在どのくらい手作りでおせちを作っている家庭があるでしょうか。おせちにはお正月の間にあまり台所に立たなくていいようにという意味もあるようですが、たくさんの種類を重箱に詰める量以上には作っておかないといけないことを年末の忙しい時に行うのは大変難しいことかと思います。私は毎年黒豆と栗きんとんを作るだけですが、それだけでも結構手間がかかります。最近は11月になると百貨店や通販でおせちの予約コーナーができるほどで、多くの家庭では注文したおせちを利用されているのではないかと思います。
そうは言ってもお正月を迎えた時には初詣に行き、全部自分で作っていなくてもおせちをいただいて新年に気持ちを新たにする習慣は、信仰心はあまり強くなくてもいろいろなものに神様が宿っていると考える日本人の宗教観にとても合致しているように思います。今年も世界的には多くの心配事があることでしょうが、自身の身体が一番大事と考えて健康に気をつけたいと思います。