眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m244

投稿日 2026年6月1日

紫陽花の季節

院長 廣辻徳彦

街角や寺社の境内に、紫陽花の花を見かける季節になりました。花屋さんの店頭にもいろいろな品種が並び、花の形や色の豊かさが魅力の一つの花とも言えるでしょう。私たちが「花びら」と思って見ている、青や紫の大きな部分は、正確には「装飾花(そうしょくか)」といって、「花」ではなく萼(がく)が発達したものです。本当の花は、装飾花の隙間に埋もれるように咲いている、「真花(しんか)」と呼ばれる部分だそうですが、今回はあまり区別せずに、まとめて「花」と書かせていただきます。
紫陽花は同じ品種でも、花の色に違いがでることがあります。理由を調べてみると、土壌のpH(酸性やアルカリ性)に影響を受けると書いてありました。花の色を左右しているのは、主にアントシアニンという色素と、土壌中のアルミニウムだそうです。酸性の土にはアルミニウムが溶けやすく、根から吸収されたアルミニウムイオンがアントシアニンと結びつき花を青色に近づけます。逆にアルカリ性の土ではアルミニウムが溶けにくく吸収されないため、本来の赤紫系の色が残るのです。 pH以外にも、肥料成分や微量元素も関係し、たとえばリン酸が多い土壌ではアルミニウムが植物に吸収されにくくなり、青色が出にくいそうです。そのため、咲かせたい色に合わせて土を調整することもあり、青い花を育てたい場合は土に硫酸アルミニウムや硫黄を加えて酸性寄りにし、赤系にしたい場合は石灰を混ぜてアルカリ性に近づけるという、化学実験のような工夫をするそうです。紫陽花のきれいな色は、品種の差はもちろんとしても、気温、雨量、日照時間、土壌の養分などの条件と生産者の努力も大きな要素だということです。紫陽花の花言葉には、色が移ろいやすいことから、変化を意味する「心変わり」や「浮気」といったものがあります。「紫陽花や きのふの誠 けふの嘘」と詠まれた正岡子規の句には、そういった意味も込められているようです。
現代の私たちは、「変わりやすい時代」を生きています。今年もすでに、各地で線状降水帯や豪雨への警戒が呼びかけられています。温暖化のせいか、梅雨は「しとしと降る雨」から「短時間に激しく降る雨」になっている印象もありますし、降水量が少なすぎる時もあります。紫陽花の季節も、少しずつ姿を変えているのかもしれません。それでも、紫陽花には同じ花でも朝と夕方で、晴れの日と雨の日で印象が変わる独特の雰囲気があります。そういった自然の変化を楽しむ心の余裕を持ちたいと思います。

健康とは!(いろいろな感染症)

5月には、南大西洋を航行していたクルーズ船で「ハンタウイルス」感染が確認され、複数の死者が出たという報道がありました。聞きなれないウイルスですが、通常はネズミなどのげっ歯類の排泄物を含む粉じんの吸入や、排泄物で汚染された食品や飲料水を摂取して感染します。 感染すると呼吸不全を起こすことがあり、致死率が10-50%と高い病気です。通常、ヒト同士では感染しないのですが、今回のウイルスは「ヒト-ヒト感染」の可能性を持つ「アンデス型」と呼ばれるタイプだったようです。世界保健機関(WHO)や欧州疾病予防管理センターも監視を続けており、乗客、乗員は病院、政府指定施設、自宅などで健康監視と長期間の隔離措置が取られています。今回の隔離は、「42日間(国によって差があります)」と報道されていました。新型コロナウイルスでは1週間程度だったのですが、アンデス型ハンタウイルスは潜伏期間が最長42日と長いため、それに合わせた対応となったようです。この「隔離」は、英語で「quarantine:クォランティーン」と言います。イタリア語の「40」を意味する「quaranta」に由来するそうで、中世ヨーロッパでペストが流行した際、港に到着した船を40日間待機させたことが始まりだそうです。当時はウイルスも細菌も発見されていませんでしたが、人の移動を制限することで感染拡大を抑えられることを経験的に理解していたのです。厳密には、すでに感染している人を分離する 「isolation(アイソレーション)」と、感染の可能性がある人を待機させる「quarantine」というように使い分けます。「quarantine」は、他にも「検疫」、「待機」、「停戦、留め置き」という意味で使われます。
一方、アフリカでは現在、エボラ出血熱の流行が続いています。コンゴ民主共和国東部から始まったと言われる今回の感染に、WHOは5月15日に正式なアウトブレイク宣言を行いました。 WHOは「対応が感染拡大の速度に追いついていない」と警告しています。検査体制が十分でない、武装勢力地域で追跡困難、自宅死亡例が多い、発見前に埋葬される例がある、などで状況が正確に把握しにくいそうなのですが、報道によれば200人を超える死者が出ているとも言われています。
遠い国の特殊な病気のようですが、新型コロナもあっという間に世界中に広がりました。現代は飛行機で世界がつながり、かつては数か月かかった大陸間移動も1日で可能になりました。便利さと引き換えに、感染症もまた国境を越えて広がりやすくなっています。冷静に情報を確認しておきたいものです。