眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e93

投稿日 2016年2月2日

いまさらながら「点眼薬」について

院長 廣辻徳彦

病院でも診療所でも、眼科で使用する薬といえば「点眼薬」です。もちろん軟膏や内服薬、点滴薬も使用しますが、最も多くの割合を点眼薬が占めます。今回は、いまさらながらではありますが、この「点眼薬」についてのあれこれを書いてみたいと思います。(文中の図は参天製薬のHPから引用させていただきました。)
まずは、本当に基礎的なところからです。点眼薬は眼に入ってからどのように流れていくのでしょう。もともと眼の表面には涙がありますが、涙は主に眼の外上方にある涙線というところで作られ、眼の表面をうるおした後にまぶたの内側にある涙点という穴を通って鼻涙管を経て鼻に流れていきます(図1)。涙は眼の表面と結膜嚢(のう)というところにたまっていて、点眼薬は点眼後に涙と混じり合って涙点から鼻へと流れていきます(図2)。
眼の表面と結膜嚢とに存在する涙の量は、大体20~30μl(μl:マイクロリットルは1mlの1000分の1、20μl=0.02ml)です。点眼薬の1滴は約50μlなので、点眼薬が1滴入るだけで涙と混ざった余りはあふれてしまいます。1滴の点眼で十分です。また、1滴が約50μlということは、5ml入りの点眼薬では約100滴(回)出るということです。両眼に1日3~4回点眼すれば1本で約2~3週間分、1日2回だと1本で約3~4週間分という計算になります。実際にはさしそこねて短い期間でなくなったり、1滴が落ちる前に目に接触して入って長い期間持ったりすることもあるようです。1本の点眼薬を毎日4回さしていて2カ月もつことは、考えにくいです。「開封後10日間」などと書いていない場合、一般的には開封後1カ月ぐらいというのが点眼薬の使用期限です。実際に少しぐらいはよいとしても、2ヶ月以上も経過した点眼薬は即廃棄してください。冷蔵庫に入れていても不可です。
 さて、点眼の方法はどうすればよいのでしょう。ヒトには、本能的に「眼に物が入りそうになれば目をつむる」、という防御反応があります。病気を治すためとはいえ、点眼は本能に逆らう行為といえます。点眼された1滴はまっすぐ下に落ちるので、できるだけ上を向く姿勢で点眼します(図3)。座った姿勢でもむつかしい時は、ベッドやソファーで仰向けになって完全に上を向くのもよいでしょう。その上で、下まぶたをしっかり下げて点眼薬を落とします。その際、眼の表面やまつ毛に接触すると、十分な量が入らなかったり、まつ毛などについている雑菌が点眼薬のボトルの中に逆流してしまったりするので要注意です。点眼後は、眼を閉じてあふれた水分を拭き取りつつ、まぶたの内側にある「涙嚢」のあたりを軽く圧迫します(図4)。理想をいえば1~2分ですが、時間がなければ30秒程度でもかまいません。点眼後に「まばたき」をするのは、新しく出てくる涙で点眼薬が薄まって、鼻へ流れてしまうのでよくありません。2種類以上の点眼薬を使用する際は、間隔を5分以上空けます。薬の成分が吸収するのに5分はかかるので、すぐに上から新しい薬を点眼すると、どちらの薬も薄まり合ってしまうからです。昔は寝る前の点眼は避けるように言われていたそうですが、現在の点眼薬にそういった心配はありません。

図1:涙の流れ    図2:涙のたまる「結膜嚢」  図3:点眼の仕方   図4:○のところを押さえる
点眼薬にも副作用があります。眼局所に生じるものでは、「しみる」、「充血」、「痒み」、「痛み」、「まぶたの腫れ」、「メヤニ」などがあります。緑内障の点眼薬(プロスタグランジン剤)には、「まつ毛やまぶたのうぶ毛が太く、長くなる」、「まぶたの色素沈着」、「まぶたのくぼみが深くなる」というものもあります。全身に出る副作用は少ないとはいうものの、喘息や心不全の方には使えない点眼薬(緑内障のβ遮断剤)もあります。妊娠中の方は、一般に15週(特に7週まで)が薬の使用に特に注意が必要です。しかし、点眼薬は全身に対してはわずかな量なので、問題となることは少ないと考えてよいでしょう(β遮断剤だけは胎児の心拍数が減るという報告があり、控えるのがよいかもしれません)。薬が合わないと感じた際には、必ず主治医にご相談ください。また、他科を受診中の方は、是非ともそれらの情報を教えてください。