眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e67

投稿日 2013年12月3日

眼でわかる全身の病気 その2

院長 廣辻徳彦

前回は全身の病気の中で、いくつか眼底を見てわかるものを紹介しました。今回紹介するのは、視野の異常からわかるいくつかの病気、特に脳の病気についてです。緑内障の回でも説明しましたが、視野とは言葉通り「見える範囲」のことです。片目ずつにそれぞれ視野があります。眼や顔を動かすともっと周囲まで見えますが、「視野の広さ」とは眼を動かさずに見える範囲のことを意味します。正常な場合は真正面の角度を0度として、鼻側と上側で約60度、下側で約70度、耳側で約90−100度といわれています。両目を開けている場合は、おおむね身体の正面の範囲が視野で、両目で同時に見える範囲は正面の120度ぐらいです。
視野を検査するには、視線を中心で固定していろいろな明るさと大きさの光が見えるかどうかを測定します。視野の中心部ほど感度が良いので、小さくしかも弱い光まで反応できます。視野の全体を測定する検査で代表的なのはゴールドマン視野検査(左図)です。視野の中心部分を詳しく検査する代表的な検査はハンフリー視野検査(右図)で、この図は中心30度を測定していて左のゴールドマン視野の赤丸部分に相当します。それぞれ測定の原理が違うのですが、ここでは触れないでおきます。黒いところ(↓)は盲点といってもともと見えない部分です。

眼でわかる全身の病気

それぞれの眼でものを見たときに、情報はどのようにして脳に伝わるのでしょう。眼はカメラと同じような構造をしているので、上下、左右が逆方向の網膜に写ります。下図左に光の情報の経路を示します。目の前の左側の青い部分の情報は、両眼ともにそれぞれの右側の網膜に写り、網膜から神経を通って視交叉という部分で右側の経路(視索といいます)を通るように進路を変えて右側の脳へ伝わります。赤い部分は逆の経路を通ることになります。このように網膜に写る情報がどこを通って脳に伝わるかは決まっているので、病気が起こる場所によって見えにくくなる(視野の異常が起こる)場所も変わってきます。下図右の線で示す病気の場所(①〜⑦)によって現れる視野の異常パターンも図のように変わります。外傷や急性の炎症でどちらかの眼の視神経がダメージを受けてしまう(①の場合)と、その眼の視野だけが障害されます(もちろん視野だけでなく視力も悪くなります)。視交叉という場所には脳下垂体という組織が隣り合っています。脳下垂体の腫瘍などで視交叉が圧迫されれば(②の場合)、両方の耳側が見えにくい両耳側半盲という特徴的な視野となります。視交叉から後の視索部分に脳腫瘍などができて圧迫される(③の場合)と、片方の視野のみが見えなくなる状態(同名半盲といいます)になります。視覚の中枢である後頭葉の脳梗塞や出血(⑥の部分の障害)でも同名半盲が生じます。ただ、後頭葉全部が一度に障害されるほど広い部分に出血や梗塞が起こることは少ないので、完全な同名半盲でなく中心部分を残す視野異常となること(黄斑回避といいます)が多いです。
患者さんの見えにくいという訴えの中には、「かすむ」、「ぼやける」、「メガネが合わない」、「ゆがむ」、「見えにくい部分がある」、「左右差がある」など、いろいろな種類があります。病気の原因は、患者さんの自覚症状、病気(や外傷)が生じた状況、診察して得られるいろいろな所見、検査結果などを総合して判断します。眼は脳と直接つながっている器官なので、眼の所見から全身、特に脳の異常部位を診断することもできるというお話でした。
(図は、帝京大学のHPと医学用語集メディックから引用させていただきました)

眼でわかる全身の病気