眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e61

投稿日 2013年6月1日

薬物による眼障害

院長 廣辻徳彦

時々、「目に虫が入った」とか「砂が入った」などで来院される患者さんがいらっしゃいます。虫や砂などは、目に入るとキズをつけてしまうことがあるので、「何か入った」と思った時は水で洗って異物を流し出します。どうしても取れない場合には受診して、診療所で異物を探すということになります。しかし、目に入るものはこうしたものだけでなく、洗剤やパーマ液、化学物質、有機溶剤、薬剤など多岐にわたります。このような液体や薬剤による眼障害を、薬剤性眼障害または化学性眼障害(化学眼外傷)といいます。どのような物質でも、第一にすべきことは異物と同じく流水による洗眼です。異物は流れ出ればそれでほぼ解決しますが、液体の場合は毒性の強いものがあるので長い時間(10分以上)洗う必要があります。病院を探したり119番を回したりするよりも先に、必ず洗眼をしてください。十分な洗眼の後、入ったものと症状によって受診を考えます。
日常よく目に入ってしまうものはシャンプーやリンスで、洗剤なども時に飛入します。シャンプーやリンスはもともと頭髪用で、洗髪のとき顔にもかかることがわかっている製品なので、強い毒性がありません。多少はしみるでしょうが、そのままシャワーでしみなくなるまで流せば十分です。充血をしても一晩寝ればほとんど治まります。洗剤も食器洗い洗剤の泡などであれば洗眼だけで心配ありません。しかし、漂白剤などは要注意です。商品名を出すのは申し訳ないですが、よく使われる「キッチンハイター」や「ハイター」は、どちらも次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系の漂白剤です。これらは放置すると失明の危険性があるので必ず流水で洗眼し、その後眼科を受診してください。パーマ液は刺激が強いので、洗眼後でもまだ充血などの症状が強い場合は受診が必要です。

洗眼

洗眼は、①左図:洗面台のシャワーヘッドを上に向けて弱い水流で目を洗う、②右図:シャワーがなければ、手のひらで水を受けて目を洗う、ようにします。点眼薬やカップを目に当てて洗うのでは水の量が不十分です。洗眼自体で眼がしみることもありますが、十分な量で洗ってください。(図は花王株式会社HPから引用)
 化学物質は、学校での実験や職場などで飛入の危険があります。酸性でもアルカリ性でも強いほど危ないのですが、硝酸や硫酸、塩酸などは使用されることが多く、酸性が強いので注意が必要です。アルカリ性の強い物質はタンパク質を変性させるので、特に重篤な障害を引き起こすことがあります。使用頻度の高い薬剤で強アルカリ性の性質を持つのは水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)です。化学実験や工場などで使われますが、石けんを作ったり灰汁抜きをしたりするなどの使用法もあるらしく、使用の際は必ず目や手指の保護をしていただきたい薬品です。他に乾燥剤や駅弁の加熱(ひもを引っ張るタイプ)に使われる生石灰(酸化カルシウム)や、酸性土壌の中和剤やライン引きに使われる消石灰(水酸化カルシウム)もアルカリ性が強く危険です(学校での事故があったため、最近のライン引きは安全な炭酸カルシウムに変わってきています)。
他に家庭で気をつけていただきたいものに、点眼薬に似た容器に入っている便秘薬や水虫薬などがあります。点眼薬と同じ場所に保管していて、形が似ているために間違えて点眼してしまうのです。薬剤そのものの角膜への毒性や、保存剤や添加剤、pHの強さなどに加え、直接点眼してしまうのでダメージを受けます。少し大きめの容器で、「眼科用に使用しないこと」などと赤字で書いてあるはずですが、間違えて手に取ってしまうと気がつきません。点眼薬とそれ以外の薬とは保管場所を変えておく必要があります。

角膜がダメージを受けた眼

左は水虫薬を点眼して角膜がダメージを受けた眼(緑色のところがキズ)、その右は治療後4日目で、キズがほぼ治ったところ。 右の2つは便秘薬と水虫薬の例。
何かが入ればまず十分な洗眼、その後、症状が気になれば眼科へ受診するようにしてください。