眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e41

投稿日 2011年5月1日

色覚異常について

院長 廣辻徳彦

4月は新しい学期の始まりです。4月の終わりから連休明けにかけて、学校では身体検査が行われます。眼科については視力検査や結膜炎、斜視などのチェックが行われます。結果は学校から児童、生徒に伝えられ、必要に応じて眼科受診をします。平成15年度までは「色覚」という検査も含まれていましたが、現在は希望者のみの検査になっています。今回は色覚異常についてのお話です。
私たちは目に入る光の中で、波長が約400?800nm(1ナノメートル = 10億分の1メートル)の光を感じています。この光を可視光線(下図左)と言い、これをうまく感じ取れるのが正常の色覚なのです。光には3原色(赤、緑、青)というものがあり、すべての光は3原色の組み合わせで表されます。網膜には3原色それぞれに対応する細胞が3種類(赤錐体?L錐体、緑錐体-M錐体、青錐体-S錐体)あり、正常の色覚を持つ人は3種類の錐体細胞がうまく働いて色を認識します。生まれつきこの錐体細胞に異常があるタイプが先天色覚異常、病気で障害されるのが後天色覚異常と分類されますが、これ以後は先天色覚異常を中心に説明します。
色覚異常というのは、この3種類の錐体細胞がうまく働かず、1種類しかないもの(1色覚=全色盲)、2種類しかないもの(2色覚=色盲)、3種類あるがそのうち1つが異常なもの(異常3色覚=色弱)に分けられます。以前は色盲、色弱という言葉が使われていましたが、差別的であるなどの理由で呼び方が変わっています。他に、錐体細胞の中でL錐体とM錐体は性染色体、S錐体は常染色体にその遺伝情報があり、どの錐体が異常かによって1型、2型、3型というようにも分類されます。1色覚と3型異常は非常にまれな種類なので、先天色覚異常は99%以上が1型か2型の2色覚、3色覚ということになります。先天色覚異常が先天赤緑色覚異常と言われるのはそのためです。日本人の場合は男性の約5%、女性の約0.2%が色覚異常であり、女性の約10%が保因者です。
色覚異常では色がまったくわからないのではなく、組み合わせによって見分けにくい色がある(代表的な組み合わせを下図右に示します)のですが、日常生活で支障がでることはほとんどありません。それは、色だけでなく形や質感でも物を見分けられるからです。しかしながら、暗がりや対象物が小さい、一瞬しか見えないなど条件が悪い場合にはより誤りやすくなってしまいます。

色覚異常について

色覚は色覚検査表や色並べの検査(パネル?D15)、アノマロスコープという器械で検査されます。学校健診では色覚検査表(石原式)でチェックし、それで異常らしいという結果がでれば眼科で精密検査を行うことになります。友人の前で色が見分けにくい指摘をされることも問題ですし、色で見分ける教材を利用する場合や黒板に赤チョークで書かれた字などは見えにくいことがあるので、教師サイドでも気をつけなければならないのですが、実際に理解が深いとはいいがたいのが実情です。最近では大学の入学や就職などの色覚異常による制限はかなり少なくなってきました。しかしながら、自衛隊、警察、航空関係ではいまだに制限があります。学校健診で色覚検査が必須でなくなった現在、希望する職業に就けないとか仕事をする上で就業が難しくなる場合もあります。色覚異常による生活上の支障は決して大きいものではありません。むしろ社会の誤解や認識不足に立ち向かう困難の方が、色覚異常の問題と言えるかもしれません。
色覚異常のご相談も随時受け付けています。何か疑問点があれば、ご相談ください。