眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e33

投稿日 2010年9月1日

近視の予防

院長 廣辻徳彦

この夏休み、学校の健康診断の結果、視力低下の通知を持って来院された子供さんがたくさんいらっしゃいました。私自身高校生のころから眼鏡をかけているので、眼鏡が顔の一部みたいになっています。子供さん自身やご両親が、近視にならず、眼鏡もなしですめばいいと思われるのは当然です(もちろん私もそうです)。近視については、眼鏡をかけると近視が進む?眼鏡よりコンタクトレンズの方が進みにくい(もしくはその逆)?訓練で近視は治る?遺伝する?などの質問も耳にします。これまでも近視に関する研究はありましたが、長期間に及んで観察された科学的に信頼性の高い研究はありませんでした。しかし、この数年の間にアメリカなどで数千人の子供を観察し、近視のリスクや予防法についてそういった研究がなされてきたので、それをご紹介します。

最初に結果をお示しします。まず近視が生じるリスクです。
1.近視には遺伝的な因子が最も強く関係する(両親が近視だと7~8倍、片方なら2~3倍)
2.都市部に居住する方が近視になる
3.IQ、学歴が高い方が近視になる
4.近業(長時間、読書量大、近距離)が多い方が近視になる
5.戸外活動が多い方が近視を抑制する

近視を予防する方法で効果が確認されたのは、以下の2つです。
1.累進多焦点レンズ(いわゆる境目のない遠近両用眼鏡)を装用する
2.アトロピンという点眼薬(ピレンゼピン眼軟膏:日本では使用不可)を使用する

いかがでしょう。近視のリスクについては5つとも、これまで言われていることとあまり変わりませんね。都市部に住んでいる現代っ子が、外で遊ばず、勉強とゲームボーイばかりしていてはよくないのは間違いないようです。ただ、近業もするけれど戸外活動の時間も多い場合には、近視が進みにくいことも同じ調査で示されています。「よく遊び、よく学べ」とはよく言ったものです。戸外活動としてインドアスポーツとアウトドアスポーツとで比較すると、アウトドアで活動する方が近視の進行が少ないようです。お日さまの下での活動が効果的かもしれないと推察されています。
それでは予防法はどうでしょう。累進多焦点レンズを装用するのがいいなら、みんなこの眼鏡をかければ近視が予防できるのでしょうか。実は統計学的な結果では有効とされましたが、実際には効果がとても少なく、現実に進行予防可能とは評価できないと考えられています。そもそも「近視になりたくない」裏側には、「眼鏡をかけたくない」という考えがあるので、予防のためとは言っても別の眼鏡を受け入れられるかは微妙です。ただし、海外ではこの考えに基づき、近視予防眼鏡の販売がすでに始まっています。アトロピン点眼(ピレンゼピン眼軟膏)という薬はどうでしょう。これはかなり近視を抑制すると評価されました。近視になるというのは眼球の長さ(眼軸長といいます)が伸びることと関係しますが、これらの薬は眼軸長の伸展を抑制すると考えられています。しかし、全身に対しての副作用や、近くが見づらくなる、瞳孔が開いてまぶしくなるなど眼に対しての副作用も強く、予防薬として続けるには難点があり、実際の使用はまず不可能と思われます。
少し弱めの眼鏡の方が近視を進みにくくするとか、その逆の報告もあります。眼鏡とコンタクトレンズのどちらが近視を抑制するかも、現時点では差がないと考えられています。それでも最近の研究で、網膜にきれいな像が当たることで眼軸長の伸展が止まる(=近視が進まなくなる)らしいということが言われてきているので、いずれ近視予防眼鏡(コンタクト)ができるかもしれません。
結局のところ、これまでも言われてきたことですが、近業(=勉強や読書)のときにはしっかり距離を保ち、ゲームボーイで休憩せずに外で走ってきなさいということが科学的に実証されたということでしょう。ちなみに訓練で治るという結果は出なかった様子です。