眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e19

投稿日 2009年7月1日

近視、老眼って?(屈折異常と調節異常) その2

院長 廣辻徳彦

前回はいわゆる「いい目」である正視についてと、近くをみるときに働く力=調節力についてお話ししました。今回は近視について書いてみます。
自然な状態(=全く調節が働いていない状態)で網膜にピントの合う眼が正視です。近視というのは、その自然な状態で光(平行光線)が網膜より前にピントを合ってしまう眼のことをいいます(図1)。遠くのものを見たときには、網膜の手前にピントが合うのでぼんやり見えてしまうのです。角膜や水晶体の屈折力が強すぎるために起こる近視と、眼球の長さが伸びてしまうために起こる近視とがあります。学童期以後に生じる近視は、主に眼球の長さが伸びることで生じるといわれています。遠くのものをみるためには、凹レンズを用いてピントを後ろにずらして視力を矯正します(図2)。一定距離にある近くのものに対してはピントが合います(図3)。
「近視は老眼になるのが遅い」と言われることがありますが、これは本当でしょうか。近視の場合(図3)のように手元にピントが合うので、ピントの合う距離がちょうど30~40センチ前後の距離であれば老眼になっても老眼鏡なしで本が読めてしまいます。正視の人も近視の人も(もちろん遠視の人も)老眼が始まる年齢にまったく差はありませんが、近視の人は老眼になっていても「老眼鏡なし」で本が読めることがあるので、老眼になりにくいという誤解が生じているのです。

屈折異常と調節異常

どうして近視が生じるのでしょう。これはいまだにはっきりとした理由が解明されていません。有力なのは両親からの遺伝によって生じるという「遺伝因子説」と、勉強やテレビゲームなど近業をする環境に順応して生じるという「環境因子説」です。現在は、この両者が関係して近視が進むと考えられています。多くは小学校入学以降に徐々に進行する「単純近視」といわれるもので、眼鏡やコンタクトレンズで良い矯正視力が得られます。「単純近視」は「学校近視」ともいわれ、成人期以降はあまり進まないのも特徴です。なかには、幼児期からかなり度が進んでしまう「病的近視」といわれるものもあります。これは眼球の長さが過度にのびることで網膜も薄くなり、矯正しても視力が出にくいとか、網膜剥離を起こしやすくなるなどの問題が出ることがあります。
それでは近視を止める、もしくは治療する方法はあるのでしょうか。残念ながら、科学的に証明された近視の治療法はありません。いろいろな説に基づいて、近視の訓練方法が行われており、水晶体の分厚さを変えて調節力に働く「毛様体筋」を訓練するとか、超音波でマッサージ(?)するとかその方法は様々です。ただ、「毛様体筋」は「胃」や「腸」と同じ平滑筋という筋肉で、腕の筋肉や腹筋などのように鍛えることができないとされています。それらすべてを意味がないと決めつけることはできませんが、もし試される場合にはよく説明を聞いたうえでやってみてください。
近視の矯正には、ピントを後ろにずらすために凹レンズを使います。一般的にはメガネが第一選択で、コンタクトレンズも有効な方法です。コンタクトレンズは直接眼に接触するので、正しく使用しないと角膜感染などで重い障害が生じることもあります。必ず定期的な検診を受けながら使用してください。最近は「レーシック」など角膜をレーザー光線で削る方法もあります。今回これについては詳しく書きませんが、先日新聞を賑わしたように、たくさんのメリットの陰にそれなりのデメリットがあります。まずは、正しいメガネを持つようにしてください。