眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e136

投稿日 2019年9月1日

新しい点眼薬(1%アジスロマイシン点眼)

院長 廣辻徳彦

世の中にはたくさんの薬があります。眼科でも、例えば緑内障の治療薬では、プロスタグランジン関連薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、αβ遮断薬、α1遮断薬、α2刺激薬、ROCK阻害薬、交感神経刺激薬、副交感神経刺激薬、配合薬などがあります。それぞれにいくつかの種類があり、さらに特許の切れた薬には多くのジェネリック薬が作られています。創薬(新しく薬を作ること)には、多くの時間とお金がかかります。化学的な実験で使えそうな物質を選び、動物実験、人を使った治験などをする時間が10-15年前後、途中でダメになってしまう場合も数多くあり、1つの薬を作るには200−300億円と膨大な費用を要します。世界の製薬メーカーが合併して巨大化している一面は、このバクチのような研究と創薬にかかる費用を小さい企業では支えられないからです。日本最大の製薬企業である武田製薬でも世界的に見れば売り上げが16位、なかなかに厳しい世界と言えます。
今回ご紹介する新しい点眼薬は、9月に発売されることになった「1%アジスロマイシン点眼薬(商品名:1%アジマイシン)」というものです。このアジスロマイシンという薬はマクロライド系という種類に分類される抗生物質で、すでに「ジスロマック」という商品名で内服薬が市販されています。皮膚感染症、呼吸器感染症、尿道炎、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患などの感染症治療に用いられ、病院で処方されてお使いの方もいらっしゃるかもしれません。抗生物質ですから抗菌作用が期待されるのは当然ですが、本来の抗菌作用とは異なる抗炎症作用(好中球が炎症部位に集まるのを抑えたり、活性酸素産生能を抑制したりする作用)も有しています。アメリカでは、すでに2007年から「AzaSite1%」という名前で点眼薬が販売されています。日本での点眼薬の適応病名(薬を使用して良いと認められた病気の名前)は、「結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎」で、用法は結膜炎では1日2回5日間、その他では1日2回12日間までとされています。もともとが皮膚感染症に強い薬であるだけに、眼の表面部分の病気に関して役に立ちそうな薬であることが伺えます。
「ショボショボする」、「眼脂が多い」、「ベトベトする」、「まぶたの周囲が気持ち悪い」という、なかなかスッキリしない症状を訴える患者さんも多くいらっしゃいます。そのような時は、「マイボーム腺機能不全」という状態になっている割合が少なくありません。マイボーム腺はまぶたの中にある分泌腺で、まつ毛の少し内側にその開口部があり、涙を乾かしにくくするための油の成分を分泌しています。年齢を重ねると、この分泌腺の機能が悪くなり、まぶたの周囲に炎症が生じたり、まぶたの縁に白っぽい小さい泡の固まり(これを眼脂と表現される患者さんも多いです)が付いたりすることが起こります(下図左)。このような状態がマイボーム腺機能不全と言われるもので、これが不快な症状を引き起こします。従来の点眼薬を指すだけでは簡単に状態が変わらないこともしばしばですが、白い物質はカット綿や綿棒で丁寧に拭くときれいになります(下図中央)。この点眼薬は抗炎症作用を持っているので、マイボーム腺機能不全の際に生じる炎症を抑えてくれることが期待されています。
以前にも書きましたが、マイボーム腺機能不全の場合には患者さんご自身にしていただきたいことがあります。まぶたを温めること(温罨法)と、毎朝の洗顔時とお風呂に入った時にまぶたの周囲も丁寧に洗っていただくことです。温罨法は小豆などを利用したホットパックを利用して温めるのが良いと思います。温めたタオルでも良いのですが、濡れたまぶたが乾く時にまた冷えてしまうので、タオルをビニール袋に入れて濡らさないようにするとよいでしょう。まぶたの周囲の洗浄は、小指の腹でまぶたの縁とまつ毛の周囲を優しくなでるようにして洗ってください。アイシャンプーという専用のものも販売されていますが、入浴時にシャンプーが少しついた指でしていただいてもかまいません。「体を洗う」や「シャンプーをする」ということのように、毎日の習慣にしてまぶたの周囲のお手入れをしていただくと、目の周りの不快感が減少してくれることにつながります。新しい点眼薬を一時期使用し、さらにこの習慣を続けていただければ、不快感が軽減してくれることが期待できるかと考えます。