眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e135

投稿日 2019年8月1日

新しい器械(スポットビジョンスクリーナー)

院長 廣辻徳彦

眼科では採血やレントゲンの検査が少ない代わりに、視力検査、眼圧検査など眼科特有の検査が行われます。眼科の病気での患者さんの訴えを本当にざっくり分類すると、「見え方について」、「赤いことについて」、「痛いこと、腫れたことについて」、「涙や目ヤニについて」、「ケガについて」、「その他」などということになりますが、やはり見え方が一番の問題となります。見えにくい、かすむという症状がどのように見えないのかをうまくこちらが聞き出すことも大事ですが、そこで行われるのが「視力検査」というものです。
視力には、メガネやコンタクトレンズを使用しないで測定する「裸眼視力」と、近視や遠視、乱視などの屈折異常をレンズで矯正して測定する「矯正視力」があります。一般的に「目のいい人」と言えば、裸眼視力が良い人のことをイメージします。それは間違いではないのですが、たとえメガネなどで矯正が必要な人でも、矯正して「1.0」以上の視力が出るのであれば、屈折異常はあっても視力的には目の病気の心配は少ないと言えるのです(もちろん、視力が1.0であっても、いろいろな病気に罹患していることはあります)。このマンスリーを読まれているのは当院にいらっしゃっている方なので、おそらくほとんどが視力検査を経験されていると思います。視力検査では、裸眼での視力検査に続いて矯正視力の検査をしますが、その際いろいろなレンズを入れ替えて視力を測定します。検査をする眼の屈折異常についての情報があれば、どのようなレンズを入れれば良いかがわかるので測定する時に便利です。そこで、視力検査の行う前に、屈折異常の程度を測定する検査を行うのです。
その検査器械は「オートレフラクトメーター:自動屈折計(図1)」といい、あご台と額当てに顔を乗せて、片眼ずつ検査します(屈折値以外も測定できる機種もあります)。器械をまっすぐに覗き込むと、気球などのイラスト(図2)が見えて、そのピントがボケたりはっきりしたりするのが見えます。イラストを見ている間に、器械が自動的に眼の屈折値を測定する仕組みになっています。器械を使わないで矯正視力を測定するテクニックや、屈折値を対面式に検査する手技もありますが、この器械は熟練度をあまり要せず、短い時間で精度や信頼性も十分な結果が得られます。しかし、身体の自由が利かずにあご台に乗せられなかったり、子供で検査を怖がったりする場合には検査ができません。当院には手持ちのレフラクトメーター(図3)もあり、車椅子の患者さんに有効に利用していましたが、それでも小さい子供さんは嫌がることもあるので、どうしても検査ができないことがありました。
今回、最近発売されたスポットビジョンスクリーナー(以下、SVS)という器械(図4)を購入しました。この器械は患者さんから約1mあまり離れたところから検査します。器械の前方にある音が鳴って光が点滅する部分を見つめると、一度に両眼の測定が数秒できます。従来のオートレフラクトメーターでは、なんとか嫌がらずに検査ができた子供でも器械と検査される眼の距離が近いため、「調節力」という力が働いて結果に正確さを欠く傾向がありました。しかし、SVSでは器械と眼との距離が離れているので、調節力についての誤差が入りにくいという利点があります。何よりも検査ができれば、できなかった場合に比べて情報がある分、その眼の状態を診断しやすくなるので今後の方針決定に役立ちます。もちろんこの結果だけを鵜呑みにしては良くないという報告もあるので、十分に考えての使用が必要ではあります。また、やろうと思えば1、2歳の子供でも検査が可能な場合もあるのですが、弱視の治療などでメガネをかけての治療を開始するのは概ね3、4歳以上からです。熱心な小児科の先生が、1、2歳の幼児に検査をして、ご紹介いただくこともあるという事例も聞くのですが、そこはもう少し待っておくのが良い場合が多いようです。これからも子供さんの屈折異常の検出や経過観察に活用したいと思っています。