眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e119

投稿日 2018年4月2日

角膜内皮の障害について

院長 廣辻徳彦

年度替りと夏休みは、進学の機会や長い休暇なのでコンタクトレンズ(以下CL)を始めることが多い時期です。高校や大学への入学前の3月は、当院にも学生さんが来院されます。CLについては過去にも紹介(No.50,51)しましたが、眼鏡のように枠が邪魔をしない、見た目がよい、スポーツをしやすいなどとても便利なものです。ただ、眼に直接接触するので、正しく装用していても角膜に傷がついたりアレルギーが生じたりすることがあります。まして、いい加減な装用や扱いをしていると、眼(角膜)に傷がつく、感染症を起こす、角膜内皮に障害が起こすなど失明につながることすらあります。CLと関係の深い角膜についてもNo.91に書きましたが、今回は特に角膜内皮の障害について詳しく書いてみます。
平成30角膜の形は直径約12mm、厚さは中央部で約0.5mm、周辺部では約0.7mmで、内部は外側から順に角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮という5層構造です(下図1参照)。角膜内皮細胞というのは6角形の単層の上皮細胞が敷石のように規則正しく配列している構造で、角膜の透明性を保つのに大事な役割を果たしています。密度は2,500-3,000/mm2個ぐらい(若年者では3,000/mm2個以上あり、2,000/mm2個以上は正常と分類されます)です。角膜内皮細胞は一度障害されると再生できません。細胞が障害されると、周囲の細胞の面積が大きくなって傷んだ細胞の面積分を補う(下図2:正常の角膜内皮と図3:拡大した内皮細胞)のですが、大きくなった細胞の働きが増える訳ではないので細胞密度が一定数より減ると機能しなくなり、角膜が浮腫(むくみ)を起こして混濁してしまいます。内皮細胞が減少しても、初めのうち自覚症状は全くありません。細胞密度が500/mm2個以下ぐらいになり角膜に浮腫(むくみ)が生じて、初めて「目がかすむ」という症状が出てきます。角膜がむくんで混濁した状態を、「水疱性角膜症(下図5)」といいます。角膜にむくみが増えると表面を覆っている角膜上皮細胞の接着力までが悪くなり、上皮細胞が表面から剥がれやすくなり角膜に傷がついて痛みを感じるようになります。
平成30角膜内皮の障害は、「原発性」という角膜内皮に生じる疾患と、「続発性」という何かの原因が影響を与える状態で起こります。原発性の疾患は別の機会に紹介しますが、続発性のものはCL以外に、白内障手術に代表される眼内手術、レーザー治療(特に緑内障発作の予防や治療で行われるレーザー虹彩切開術:下図4)、急激な眼圧上昇(急性緑内障発作など)や慢性的高眼圧(末期の緑内障など)、眼外傷後(角膜の外傷、分娩時の外傷など)、眼内の炎症(ぶどう膜炎や眼内感染症など)で生じてきます。(下図は左から1、2、3、4、5)

白内障の手術は比較的短時間で終了し、眼にも身体にも負担の少ない手術です。しかし、水晶体の混濁を除去するためには物理的に前房(角膜と水晶体、虹彩の間に空間:上図で☆のところ)で器具の操作をする必要があるので、角膜内皮に影響が出てしまいます。手術前には必ず角膜内皮数を計りますが、1,000/mm2個以下の場合は気を遣います。レーザー虹彩切開術で、術後数年以上経過してから「水疱性角膜症」が生じることが眼科医の中でも問題となっていました。その原因はレーザーを行う際の総エネルギーの問題であるなどが考えられていますが、どういうわけか欧米よりも日本で多く報告されています。治療や予防のために行うことで新たな問題を起こすのは望ましくないので、最近ではレーザー虹彩切開術を行う際にYAGレーザーという器械を用いること(レーザーの総エネルギーが少ない)が多くなっています。また、レーザーでなく白内障手術を行うことで緑内障発作の治療や予防ができるので、今後はこの問題も少なくなることが期待されます。
平成30角膜内皮の障害には角膜移植しか治療がありません。できるだけ大事にしておきたいものです。