眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e127

投稿日 2018年12月4日

風疹の流行―ワクチンについて

院長 廣辻徳彦

今年は夏以降にニュースで、風疹が流行していること、妊娠中(特に妊娠初期)の女性が感染した場合に「先天風疹症候群」というものが新生児に発症するので注意が必要であること、特に30−50代の男性で風疹に対する抗体価が少なくワクチンの接種が望ましいことなどが報道されています。実は、2013年のマンスリーÑo.63でも、「風疹と先天風疹症候群」について記載していて、5年前にも風疹の流行があったことが思い出されます。実はこの時の流行は今年と比べても桁違いに患者数が多く、2012−13年の合計で実に16,000人以上の感染者があり、その影響で45人の先天風疹症候群の新生児が生まれています。今年の流行はまだ数では2,100人を超えたところ(11月21日現在)ですが、この夏以降2012年シーズンを超える勢いで増加しており、来年にかけてさらに大きな流行にならないよう警戒をしておかないといけない状況です。先天風疹症候群では難聴、心疾患、白内障、精神運動発達遅滞などを伴って出生する可能性があります。他にも、眼では網膜症(ごま塩様眼底)、緑内障、小眼球、全身的に肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞など症状は多岐にわたります。詳細は以前に記載していますので、今回は目の病気という範囲から外れてしまいますが、風疹という病気に限らず「ワクチン」のことについて書いてみます。
ワクチンとは、感染症を予防するために病原体やその抗原から作られた医薬品のことを言います。ワクチンとして初めて使用されたのは天然痘ワクチンで、これを発明したのはイギリスのエドワード・ジェンナーです。牛の天然痘である牛痘に罹患した人は天然痘にかからない(もしくは軽症ですむ)と言われていたことから、20年近くも研究を続け、使用人の子供に牛痘を接種したその数週間後に天然痘を接種しても発症しなかったことを確認し、1798年に世界で初めて「種痘」を発表しました。1980年に天然痘が根絶したことを考えれば、大発明と言えるでしょう。その後、これまた有名なフランスのルイ・パスツールが病原体を培養して弱毒化すればより安全に免疫を得られることを証明し、多くのワクチンが作られるようになったのです。
ワクチンには病原体(微生物やウィルス)の毒性を弱めた「生ワクチン」と、ウィルスや細菌などを化学処理などで殺したもの、もしくはその抗原という部分のみを培養して作られる「不活化ワクチン」という種類があります。生ワクチンの方が獲得する免疫力が強く、しかも長い間持続するという長所がありますが、毒性が弱いとはいえ病原体が生きているので副反応が起こりやすいという短所もあります。生ワクチンには、BCG、ポリオ、麻疹、風疹、麻疹・風疹混合、流行性耳下腺炎、帯状疱疹(水ぼうそう)、黄熱、ロタウィルスなどの種類があり、不活化ワクチンにはインフルエンザ、肺炎球菌、Hib(ヒブ:インフルエンザ桿菌b型)、狂犬病、コレラ、三種混合(ジフテリア、破傷風、百日咳)、四種混合(三種混合+不活化ポリオ)、日本脳炎、百日咳、肺炎球菌(小児用と高齢者用)、A型肝炎、B型肝炎、ヒトパピローマ(HPV:子宮頸癌対策)など、様々なワクチンがあり、国内未承認のものも多くあります。ワクチンの最大の目的は感染症対策です。それには個人に対する感染予防と、集団感染の予防という二つの目的があり、個人的には感染リスクを減らすことと重症化を防ぐこと、集団的には多くの人が免疫を獲得することで未接種の人も含めて感染の広がりを抑える「集団免疫効果」が得られることです。接種方法は、市町村などに自治体が主体となって行われる多くは金銭的補助のある「定期接種」と、個人が希望して受ける自己負担の「任意接種」があります。ただ、ワクチンには副反応もあり得るので、それを心配するのも当然のことです。
特に日本では、平成元年に始まったMMR(麻疹、おたふく風邪、風疹)ワクチンによって、高率に無菌性髄膜炎(原因はH大B研の使用株と製造過程とに問題のあったおたふく風邪ワクチン)が生じたにも関わらず、4年にわたって当時の厚生省が接種を中止せず被害を拡大させたことなどから、他のワクチンに対しても「ワクチンアレルギー」を過剰に感じる傾向にあります。MMRワクチン被害の影響で麻疹、風疹ワクチンの接種率が下がった側面もあり、「日本は麻疹輸出国」と言われたり、最近の風疹感染拡大につながったりもしているのです。他にも、ヒトパピローマウィルスワクチンは、日本においてのみ多く報告される原因不明の意識障害や筋力低下を引き起こすとして定期接種が控えられるようになりました。世界保健機構(WHO)、産婦人科学会、小児科学会などは積極的な接種を勧告していますが、事態はあまり変化しない様子です。厚労省には科学的な判断を期待したいのと同時に、起こり得る副反応に対してのしっかりした対応と救済制度を確立させて欲しいものです。季節性インフルエンザでも毎年世界で数十万人が死んでいます。個人的には、できる予防接種は接種しておくべきものと考えています。