市販で購入できる点眼薬
院長 廣辻徳彦
今月の「健康とは」で、「メグスリノキ(目薬の木)」を紹介しました。これまでマンスリーNo.197で、病院で処方される点眼薬などについてご紹介したことがありますが、市販の点眼薬について詳しく取り上げたことはありませんでした。そこで、今回は現代の「目薬」、特にドラッグストアで購入できる市販の点眼薬について考えてみます。(以後は、医療機関で処方される点眼薬を「医療用薬」、ドラッグストアで購入できる点眼薬を「市販薬」と表記します。)
市販薬といえば、CMではロート製薬や参天製薬などの会社が有名ですが、実際には10数社以上が市販薬を製造販売しています。市販薬は、一般点眼薬、抗菌性点眼薬、アレルギー用点眼薬、人工涙液、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬などに分けられています。一方、医療用薬には緑内障、感染症、炎症、ドライアイ、アレルギーなど、それぞれの病気に対する点眼薬があります。下図で医療用薬の大まかな種類と、その効能に近い市販薬を比較しています。他に医療用薬には、白内障の治療薬や検査用として使われる薬剤もあります。
| 種類 | 医療用薬 | 市販薬 |
|---|---|---|
| 緑内障 | 多数あり | なし |
| 抗菌薬・抗ウイルス薬 | ニューキノロンなど数種類 | 主にサルファ剤 |
| ステロイド | あり | なし |
| 非ステロイド系抗炎症薬 | プラノプロフェン0.1%など | プラノプロフェン0.05%など |
| ドライアイ | ヒアルロン酸、ジクアホソルなど | ヒアルロン酸、人工涙液など |
| 抗アレルギー | エピナスチンなど数種類 | クロモグリク酸、クロルフェニラミン |
| 眼精疲労 | B12、ネオスチグミンなど | 左記以外に多成分の配合剤が多い |
医療用薬は、市販薬より「よく効く」あるいは「副作用が強い」という印象があるかと思います。一部は確かにその通りなのですが、医療用品は特定の病気を治療する薬として承認を受けている一方で、市販薬はそれと違う基準で、一般の人が自分で症状を判断して安全に使用できる薬という位置付けです。使用する状況や目的、承認の仕組みが異なっているので、一律には比べられません。ですから、「市販薬の成分は効かない」というわけでははありません。また、医療用薬と市販薬に同じ成分が含まれていることもありますが、「市販薬の薬剤は、医療用薬より濃度が薄い」というわけではありません。例えばビタミンB12であるシアノコバラミンという成分は、医療用のサンコバ点眼は0.02%で、市販薬の中にも0.02%の製品があります。ピント調節に作用するネオスチグミンという成分も医療用は0.005%、市販薬にも最高0.005%含まれるものがあります。一方、抗炎症薬のプラノプロフェンは医療用のニフラン点眼には0.1%含まれていますが、市販薬の濃度は0.05%程度です。
医療用薬には適応(使用対象の病気)が厳密に決められていて、点眼薬の中には合剤を除けば基本的に一種類の有効成分しか含まれていません。それに対して市販薬には、一本に含まれている「薬効成分の多さ」が特徴といえます。ある点眼薬では、ネオスチグミン、ビタミンB12・B6、コンドロイチン、タウリン、アスパラギン酸、グリチルリチン酸、クロルフェニラミンなどを配合し、10種類以上の有効成分を含んでいるものもあります。市販薬は「疲れる、かゆい、赤い」などいくつもの症状に、一瓶で対応しようとしているわけです。もちろん、医療用薬と市販薬とで効果に差があるものもあります。抗菌点眼薬はその代表で、医療用薬にはニューキノロン系やセフェム系などの抗菌薬がありますが、市販の抗菌点眼薬では基本的にス古くからあるサルファ剤(少し抗菌力が弱い)しか使われていません。また、アレルギー用にはクロモグリク酸(医療用薬ではインタール点眼の成分)やクロルフェニラミンがありますが、現在医療機関でよく処方される、(効き目の高い)エピナスチンやオロパタジンなどの成分を含むものは市販されていません。緑内障点眼薬とステロイド点眼薬は医療用薬のみです。
また、医療用薬では、できるだけ刺激が少ないように工夫して製剤されますが、市販薬にはl-メントール、d-ボルネオール、dl-カンフルなど、清涼感や刺激感を与える成分が添加されているものもあります。これらは有効成分ではなく、刺激による「効いた感じ」を狙うものです。他にも、テトラヒドロゾリンやナファゾリンなど「充血を取る」成分を含む市販薬は、結膜の血管を収縮させるので、赤い目が比較的短時間で白くなります。しかし、原因そのものの治療ではないので、頻繁に長期間使用すると薬が切れたときに血管が拡張してより充血してしまう「反応性充血」を起こすことがあります(リバウンド)。
ドラッグストアには多くの市販薬が並んでいます。魅力的な効能も書いてありますが、大切なのはその中身です。病院に行けないときに、市販薬を使うことは必ずしも悪いことではありません。ただ、充血や痛み、かすみなどの症状が続くときは、原因を調べるための受診が必要です。市販薬を選ぶときは、箱の裏の「成分」をよく見て、症状に合わせて使用されることをお勧めします。





