台風のこと
院長 廣辻徳彦
「二百十日」という言葉があります。立春から数えて210日目という意味で、今年は9月1日ごろです。日本では昔から台風や強風に注意する時期とされ、「台風は秋」という印象があります。しかし最近は、7月や8月にも台風のニュースを耳にします。しかも、台風の発生する場所がよく聞かれるフィリピンの沖合付近ではなく、日本の近海ということあります。ちなみに、台風は「北西太平洋」で発生した熱帯低気圧で、最大風速が約17m/s(34ノット)以上に発達したものを指します。同じ熱帯低気圧でも、「インド洋や南半球」で発生して最大風速が約17m/s以上に発達したものはサイクロン、「大西洋や北東太平洋」で発生して最大風速が約33m/s(64ノット)以上になったものはハリケーンと呼ばれます。
台風は暖かい海で大量の水蒸気が立ち上がって発生し、周りからの風などで積乱雲ができる時に放出される熱の影響でさらに気圧が変化して発達し、地球の自転の作用で渦を巻きます。一般に海面水温が26~27℃以上の海域で発生します。近年は日本周辺の海面水温が上昇し、近海で台風が発生することがありますが、海が暖かいだけで台風ができるわけではなく、湿った空気や風の状態など、いろいろな条件が必要です。
台風の進路は気になるところですが、台風には自分で進むエンジンや、進路を決めるハンドルはなく、周囲の大きな空気の流れに運ばれているだけなのです。流れの一つは太平洋高気圧の周りに吹く風です。低緯度で発生した台風は、まず東から西へ吹く風に流されて西へ進むことが多く、やがて太平洋高気圧の縁に沿って北上します。さらに北へ進んで偏西風に乗ると、今度は東寄りに向きを変えて日本付近を北東へ進みます。天気図でよく見る時計回りに弧を描く進路がこれに当たります。しかし、太平洋高気圧の位置や張り出し方、偏西風の位置も毎年同じではありません。高気圧が西へ強く張り出せば台風はその南側を西へ進みやすく、弱ければ北上しやすくなります。偏西風の影響で、速度が遅くなったり、予想外の方向へ動いたりします。台風情報では、気象予報士が太平洋高気圧や偏西風、中心気圧などの説明をしています。それを意識して聞いてみると、個別の台風情報が少し分かりやすくなるかもしれません。
今回は台風のことを書きましたが、千葉県や石川・富山県、福井県での線状降水帯による大雨の被害は大変なものでした。チベット・中国の洪水被害も大規模に及び、少しでも日常が戻るように祈念します。
健康とは!(食べ合わせを考える)
土用の丑の日は過ぎましたが、暑い時に鰻を食べると元気が出る気になります。鰻といえば、「鰻と梅干し」は食い合わせが悪いと聞いたことはないでしょうか。調べてみると江戸時代に東洋医学の合食禁(がっしょくきん)という考えがあり、それに基づいた説のようです。鰻は体を温める「熱(温)性の食材」、梅干しは体を冷やす「寒(涼)性の食材」に分類されていたため、反対の性質を持つ食材を同時に食べると、体内のバランスが崩れて胃腸への負担がかかると言われたらしいです。実際には、梅干しに含まれるクエン酸などの酸味が胃酸の分泌を促して脂ののった鰻の消化を助け、鰻に豊富なビタミンB群と、梅干しのクエン酸を一緒に摂ることで、エネルギー代謝が上がり夏バテ防止に役立ちます。梅干しで食欲が増すと、高級な鰻をたくさん食べてしまうため、「食い合わせが悪い」ことにして、贅沢や食べ過ぎを戒めたのではないかという説もあるほどです。
「天ぷらとスイカ」も有名です。油の多い天ぷらと水分の多いスイカを同時に食べると消化に悪いとされました。「カニと柿」も知られますが、これも両方「寒(涼)性の食材」で体を冷やすためよくないとされました。成分的に、カニは高たんぱく質で、柿には渋み成分である「タンニン(シブオール)」が含まれます。タンニンにはたんぱく質を凝固させる性質があるので、消化に良くないと問題視されたのかもしれません。いずれも絶対的な根拠は乏しく、昔の「食い合わせ」には迷信も混じっているようです。ただ実際に、食品の成分同士が影響し合うことはあり、例えばほうれん草などに含まれるシュウ酸はカルシウムや鉄の吸収を妨げるので、茹でてから使うことが勧められています。
まだ暑いこの時期、例えば豚肉に豊富なビタミンB1は、ご飯などの糖質からエネルギーを作るために欠かせません。豚肉にニンニクやネギ類を組み合わせると、ネギ類に含まれているアリシンがビタミンB1と結合して吸収率が上がり、香りが食欲を増してくれます。小松菜など植物性の鉄を含む食品に、ピーマンやブロッコリーなどビタミンCの多い食品を組み合わせると、鉄の吸収を助けてくれます。食欲のない日に食べたくなるそうめんも、それだけでは糖質中心になってしまいますが、豚しゃぶ、トマト、オクラ、ツナ缶、ゆで卵などを乗せ、たんぱく質やビタミンB1、野菜を摂れば栄養的にもよくなります。
食事にひと工夫して効率的に栄養を摂るようにし、もうしばらく続く暑さを乗り切りましょう。





