眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e219

投稿日 2026年8月3日

網膜に白点が現れる疾患

院長 廣辻徳彦

人間ドックや健康診断で、「眼底検査」をされた方もいらっしゃると思います。眼底カメラという器械の前に座り、網膜の写真を撮る検査です。眼底(網膜)の病気や、動脈硬化、緑内障のチェックができます。その中で、頻度は少ないのですが、網膜に白っぽく見える点が多数見つかることがあります。このような所見を示す病気をまとめて、「白点症候群」と呼んでいます。一つの病気を表す名前ではなく、白点の大きさや位置や数、片眼か両眼か、発症年齢や経過なども異なる病気の総称です。今回は、その中から多発消失性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome:MEWDS)という病気を中心にいくつかご紹介します。Evanescentは、「消えていく、はかない」という意味で、眼底に多数の小さな白点が現れ、時間の経過とともに目立たなくなっていくことを意味しています。
MEWDS は、20-40歳の若い成人、特に女性に多く、通常は片方の眼に突然発症します。視力が低下するほか、「視野の一部がぼんやりする」「中心付近が暗く感じる」「光がチカチカして見える」といった光視症が起こります。発症前に、発熱やのどの痛みなどの風邪に似た症状がみられることもあります。何らかのウイルス感染をきっかけに免疫反応が起こり、網膜に一過性の変化が生じるのではないかと考えられています。眼底検査では、網膜の周辺にかけて灰白色の小さな点を多数認めます。白点の色が薄く、通常の眼底写真だけでは分かりにくいこともありますが、網膜の断面を映すOCTや、網膜色素上皮の変化を調べる眼底自発蛍光検査、蛍光眼底造影検査などを組み合わせて診断します。OCTでは、光を感じ取る視細胞の一部に乱れがみられます。MEWDSは、特別な治療をしなくても数週間から数か月で改善し、視力も元に戻ることが多い疾患です。再発や両眼の発症も少ないと言われています。ただ、症状や検査所見がほかの炎症性疾患と似ることがあり、中には視野の異常などが残る場合もあるため、経過観察は必要です。下図左はMEWDSの眼底写真で、中央は黒四角の拡大図で白い斑点がわかります。右図は眼底自発蛍光検査で、左写真の白四角部分の拡大です。白く細かい顆粒状の蛍光像を認めます。

「急性後部多発性斑状色素上皮症(Acute Posterior Multifocal Placoid Pigment Epitheliopathy :APMPPE)という病気は、10~30代の若年者の両眼に発症することが多く、MEWDSの小さな点とは違い、眼底に比較的大きなクリーム色の平たい斑点が現れます。症状は両眼の急激な視力低下、中心が見えにくくなるような視野障害が生じます。網膜の外側にある脈絡膜の毛細血管の血流障害や血管炎といわれていますが、はっきりした原因は不明で、この病気も風邪のような症状のあとに発症することがあります。多くは1~3か月程度で白斑が消えて視力が回復しますが、中には視力障害が続く場合があります。まれに脳の血管の炎症などを伴うことがあるため、強い頭痛やしびれなどがあれば全身の検査も必要になります。
「バードショット網脈絡膜症」は主に中年以降に発症し、両眼に慢性的な炎症が続く病気です。眼底に散弾銃で撃った跡のような、淡いクリーム色の斑点が放射状に並ぶため、鳥を撃つ散弾を意味する「バードショット」という名前が付いています。かすみや視力低下、色覚異常や視野異常を伴います。特定の白血球の型であるHLA-A29というものと強く関連していることがわかっていて、北欧系の白人に見られることが多く、日本人には稀な自己免疫性ぶどう膜炎です。MEWDSとは異なり自然に治る病気ではなく、ステロイドや免疫を調節する薬による長期的な治療が必要になることが多い疾患です。
このほか眼底に白点がみられる病気には、白点症候群に含まれないもので、遺伝が関係する「白点状網膜症」や「白点状眼底」などがあります。白点状網膜症は、眼底(網膜)に無数の白〜黄白色の斑点が散在する非常にまれな進行性の遺伝性網膜疾患です。網膜色素変性という病気の特殊な病型(同スペクトラム)と考えられており、網膜の光を感じる細胞が障害され、視力低下や視野狭窄が徐々に進行します。白点状眼底は基本的に進行しない疾患で、網膜全体に小白点が散在し、幼少期から夜盲の症状はあるものの時間をかけて慣らせば暗がりでも見えるようになる特徴があり、視力も比較的良好です。
網膜の白点を特徴とする疾患はいくつかありますが、自然に回復するもの、症状が残るもの、長期の治療が必要なもの、遺伝性で進行するものなど経過もさまざまです。健診で何かの異常を指摘された場合は、早めに眼科の受診をお勧めします。