眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

(受付)午前8:30〜 午後2:00〜 (休診)土・日・祝祭日・年末年始 ご予約・お問い合わせ0797-72-6586

広辻眼科マンスリー 第m249号

投稿日 2026年11月1日

今年の冬の気温(遠い海域からの影響)

院長 廣辻徳彦

「菊の香や 月夜ながらに 冬に入る」という子規の句があります。「冬に入る」は立冬のことで、菊や月といった秋の風情を感じつつ、暦の上で冬を迎えることを詠んでいます。今年の立冬は11月7日、今年の10月は前半が暖かく、後半は肌寒く感じる気温でしたが、冬の気温はどうなるでしょう。
9月に、南米ペルー沖を含む赤道付近の太平洋東部で、面水温が基準値より4.0℃高く観測された、という気象庁の発表がありました。この地域の海水温が高くなることを「エルニーニョ現象」と言いますが、1949年以降で最も高いそうです。遠い海域で起こる現象ですが、日本の夏の暑さや冬の寒さに影響を与えます。
この現象には、赤道付近の太平洋に吹く「貿易風」という東風が関係します。貿易風は、東側の南米沿岸の表面付近の暖かい海水を、西側のインドネシア方面へ押し流します。そのため、南米沿岸の海域では深部から冷たい海水が湧き上がって海水温が下がります。貿易風が弱いと暖かい海水が東側で留まり、冷たい海水の湧き上がりにくくなって海域の海水温が高くなります。これがエルニーニョ現象です。反対に、貿易風が強まって海水温が平年より低くなるのを「ラニーニャ現象」と言います。これらは数年おきに起こり、半年から1年以上続くこともあります。ちなみに、エルニーニョはクリスマスの頃に海水が暖かくなることから、スペイン語で「男の子(特に幼子キリスト)」を意味し、ラニーニャは「女の子」という意味です。海水温の変化は、海面から蒸発する水蒸気や、それから発生する積乱雲に影響を与えます。積乱雲の変化は、上昇気流や上空の風の流れに影響し、地域を超えて伝わります。エルニーニョが起こると、南米西岸で大雨や洪水が起こりやすくなる一方、インドネシアやオーストラリアでは干ばつが起こりやすくなります。
日本では、エルニーニョが発生した年の夏は太平洋高気圧が弱まって冷夏に、冬は冬型の気圧配置が弱まって暖冬になりやすいそうです。反対にラニーニャでは、暑い夏や寒い冬になりやすいそうです。実際には偏西風や寒気の動きなども関係しますが、今年のエルニーニョは冬にかけても継続すると予測されているので、冬の到来が遅くなり暖冬になる予想です。ただ、「暖冬=降雪量の減少」ではないらしく、降雪量は日本海側で平年より少なめの予想ですが、一時的な強い寒気の南下や南岸低気圧の影響による局地的な大雪の警戒は必要だそうです。季節の変化は日本のよいところですが、異常気象は避けて欲しいと思います。

健康とは!(秋の味覚「キノコ」)

秋はいろいろな食材が収穫される季節です。松茸に代表されるキノコは秋の味覚の代表の一つで、低カロリーかつ食物繊維が豊富な食材です。食物繊維は腹持ちが良く、腸内環境の改善に役立ちます。キノコの細胞壁に含まれる多糖類の一種のβグルカンには、免疫機能に良い影響を与える効果や、腸内でコレステロールや糖分の吸収を緩やかにする効果があると言われています。また、干しシイタケなどには、骨の健康に大切なビタミンDが含まれています。
今年は雨が多く、市街地の公園や道端にキノコがたくさん発生したというニュースがありました。キノコはカビや酵母と同じ菌類の仲間で、湿度が多いところによく生えてきます。日本には数千種類のキノコがあるとされていますが、食用になるはその中の数%にすぎません。むしろ、野生のキノコには「毒キノコ」があるので気をつけなければいけません。厚生労働省などの統計では、毒キノコによる食中毒は9月から11月に集中しています。約半分がヒラタケやシイタケなどと間違えられる「ツキヨタケ」によるもので、激しい嘔吐や腹痛を起こします。シメジ類と似ている「クサウラベニタケ」による中毒も多く、「ドクツルタケ」などは、肝臓や腎臓に重い障害を起こして死亡することもあります。毒キノコの判別法で、「派手な色のキノコは毒」、「虫が食べていれば安全」、「縦に裂ければ食べられる」、などには根拠がありません。毒成分には加熱しても分解されないものがあり、図鑑やスマートフォンの画像検索で食用と判断するのは大変危険です。知らないキノコは「採らない、食べない、勧めない」ことが大切です。
昭和50年前後に、「紅茶キノコ」というものが流行しました。砂糖を加えた紅茶に、「スコビー(SCOBY)」と呼ばれる酵母や酢酸菌などを入れ、発酵させた飲料です。表面にできるゼリー状の塊がキノコに似ているので名前がつきましたが、キノコではありません。日本では姿を消していましたが、海外では「コンブチャ:Kombucha(昆布茶とは全く別物)」という名前で広まっているらしく、おしゃれな健康飲料(腸活をサポートする嗜好・発酵飲料)として、最近は日本にも逆輸入されています。
キノコは秋の食卓を豊かにしてくれる自然の恵みです。私たちが実際に食べているのは年中手に入る「栽培キノコ」ですが、「天然キノコ」は味が深くおいしいと言われています。天然キノコは道の駅などで見かけることもあるので、店頭で見つけた時は手に入れて、秋を楽しんでみてください。