眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e180

投稿日 2023年5月1日

眼でわかる脳の病気

院長 廣辻徳彦

「目は心の窓(心の鏡)」や「目は口ほどに物を言う」という言葉があります。目の動きやまばたきの具合などで相手の気持ちを読み取ることができる人もいるようですが、実際の話、眼球は脳と直接つながっていて、眼を検査すれば脳の病気がわかることもあります。
眼から得られた情報は神経を通って脳に伝達されます。情報は網膜を経て視神経を通り、両眼の視神経が視交叉というところで交わってからは左右の視索と名を変え、最終的に大脳の後頭葉にある大脳視覚野にいたります(下図を参照:帝京大学のHPと医学用語集メディックから引用)。伝達経路のどこかに異常が生じると、見える部分の一部に異常が出て、「視野異常」という症状で現れます。小さくてわかりにくいのですが、同じ下図にいろいろな部位で障害とそれによる視野異常を示します。例えば①のところで視神経が障害されるとその側の眼の視野のみ影響されます。②の部分には脳下垂体があり、下垂体腫瘍で両側の耳側半盲が起こります。視索(③の部位)以降の障害では、その範囲によって程度の異なる同じ側の視野異常(同名半盲といいます)が起こります。
脳の表面は「軟膜」という膜で覆われていて、その外側には「くも膜」、「硬膜」と呼ばれる膜があります。硬膜の外側は頭蓋骨です。主な脳の血管はくも膜下腔の中を通っています。脳とくも膜の間の「くも膜下腔」と呼ばれる空間と、脳の中にある脳室や脊髄の周囲は「脳脊髄液」で満たされています。脳脊髄液の入っているところを「髄液腔」と言いますが、脳とつながっている視神経や視交叉、視索のまわりにも髄液腔が存在しています。したがって、脳脊髄液は視神経の外側を通じて眼球のすぐ後にまできていることになります。脳の病気で有名な「くも膜下出血」は、脳の血管にできた動脈瘤が破裂して起こり、半数近くの人が死亡してしまう重要な病気です。頭痛などの症状が最初に出るので眼でわかるというには語弊がありますが、くも膜下出血が起こるとくも膜下腔の内圧が上がるので、視神経にうっ血乳頭(下記参照)が生じたり硝子体出血という目の中の出血(これをを特に「テルソン症候群」と言います)を生じたりすることがあります。

眼底検査で視神経がむくんで見える「うっ血乳頭」という所見をみることがあります。この場合は「頭蓋内圧亢進症」が強く疑われます。原因疾患は脳腫瘍のことが多く、硬膜下血腫、くも膜下出血、小児の水頭症、髄膜炎などの病気でも起こります。大脳の前頭葉に髄膜腫などの腫瘍ができてそこに接する側の視神経が萎縮し、もう片方の視神経にうっ血乳頭が起こる場合を、特に「フォスターケネディ症候群」と言います。

眼球の入っている眼窩という部分の後には、眼球や眼窩、脳からの血液が流れてくる海綿静脈洞というところがあります。その中を内頸動脈という太い動脈が通っていますが、その血管が動脈瘤破裂や外傷などによって海綿静脈洞に出血してつながってしまう内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)という病気があります。眼球突出、拍動性雑音、充血や眼圧上昇、視力低下などが起こります。他に硬膜動静脈瘻という病気で似た症状が起こることがあり、写真は硬膜動静脈瘻の人の脳神経外科での治療前後の充血を示します。太くなった血管が元に戻っているのがわかります。眼は脳の出先機関という考えもできるので、これからも気をつけて診療にあたりたいと思います。