眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e174

投稿日 2022年11月1日

子供の目を守る

院長 廣辻徳彦

日本眼科医会という眼科医で作る医師会のような組織があります。日本眼科医会も医師会がそうであるように眼科医の地位を守るための団体という一面はあるのですが、各種の健診事業や社会に対して眼科に関しての啓蒙活動などを行なうのが大きな目的です。最近「ACジャパン」のテレビCMで緑内障についての啓蒙CMが流れているのをご覧になった方もいらっしゃると思いますが、これも日本眼科医会の活動の一つです。近年、眼科医会は「子どもの目を守る」という活動を積極的に行なっていますので、今回はこの活動をご紹介したいと思います。
HPの文章をそのまま引用しますが、「乳幼児から高校生まで。人生の中では短い期間ですが、目の発達と成長にはとても重要な時期と言えます。」という大きなテーマの中で、6項目について注意を喚起しています。① 園児検診マニュアルと3歳児健診の屈折検査マニュアル、② 目の健康啓発マンガ ギガっこデジたん!、③ 近視、④ 色覚、⑤ コンタクト関連情報、⑥ 子どもの目の外傷、という内容です。各論としてはマンスリーでこれまで取り上げてきた項目も含まれていますので過去の記事もご参考にしてください。
①の園児検診マニュアルと3歳児健診の屈折検査マニュアルは、どのように園児や3歳児健診を進めていくかというもので、これ自体は眼科医や園医向けのマニュアルです。子どもの視力を含む目の機能は生後から3歳ごろまでに急速に発達し、6-8歳くらいまででほぼ完成します。この時期に健診で異常を見つけないと、将来メガネなどを使用しても視力が出にくい弱視になることがあるので、子どもの目を正確に検査できる率を上げることが大切なのです。しかし、平成3年度に眼科医会が行なった調査で、3歳児健診で子どもの目の屈折値を器械で測定している自治体の全国平均は28.4%であり、正確な検査ができていない自治体が多いことがわかりました。厚労省に働きかけたところ、予算の補助が降りるようになり、その結果平成4年の6月時点で70.8%以上が器械を導入(もしくは予定)することとなりました。今後の弱視の早期発見や予防につながることが期待されます。
②の目の健康啓発マンガ ギガっこデジたん!と③の近視は関連する項目です。②は文科省が「PC端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムであり、仕事や家庭、社会のあらゆる場所でのICT活用が日常となっているので、子どもたちにも学校でそれを学ぶ環境を整えないといけない」と提唱して進めている「GIGAスクール構想」に合わせた取り組みです。PCやスマホを利用するのは仕方がありませんが、近年子どもの近視低年齢化と度数の増加傾向が問題となっています。将来の緑内障や黄斑変性症などのリスク増加も懸念されるので、デジタル化は進めつつも近視の進行抑制を考えなければいけません。内閣府が行なった令和3年度のインターネット利用調査で、1日の利用時間が10歳以上の小学生が3時間27分、中学生で4時間19分、高校生で5時間31分という実態が明らかになりました。コロナ感染の影響もあるでしょうが、前年度から約1時間増加していました。近視の度を改善する治療は今のところありませんので、子どもさんのPCやスマホの過度の利用には注意したいところです。
④の色覚、⑤のコンタクト関連情報、⑥の子どもの目の外傷についてはこれまでもマンスリーで書いてきました。色覚異常の人には見分けにくい色があり、そういう色使いを避ける「色覚バリアフリー」という概念を眼科医会は推進しています。コンタクトレンズは正しい管理をすることで問題を少なくすることができます。親御さんが検診もせず適当に購入したり使用したりしていると、子どもさんもいい加減な使い方をする傾向になるので、コンタクトレンズはしっかり管理してほしいと思います。子どもの目の外傷の一番の原因はスポーツです。これを全く
ゼロにすることはできませんが、年齢に合わせて気をつけつつ、のびのびとスポーツを楽しんでほしいものです。

成長過程の子どもの目はとても大切です。大人が気をつけられるところは助けてあげてほしいと思います。
(上図は日本眼科医会の啓発ポスターを一部改変して掲載しました。30分に一度は遠くを見る、充血しているのにコンタクトレンズをしてはいけないというポスターです。)